Research Abstract |
ポリマー材料のレーザ加工現象を支配すると考えられるパラメータ(照射パルス数,照射パワー密度,レーザ波長,ポリマー材質,材料の光吸収係数・延伸履歴,周囲気体・圧力,試料温度)を広範な範囲で変化させた実験を行い,その物質除去機構を明らかにし,ポリマー材料のレーザ加工における光熱変換・伝熱現象に関する詳細な知見を得ることを本研究の目的とし研究を行っている. 今年度は,YAGレーザ第四高波長(波長266nm,パルス幅4.5ns,発振周波数10Hz)をポリマー試料(ポリエチレンテレフタレート(PET),膜厚250μm,二軸延伸)に照射し,加工痕を形成させた.照射パワー密度は10^<11>〜10^<12>W/m^2の範囲とした.この加工痕の3次元表面形状を表面粗さ計を用いて計測し,この3次元形状データの数値積分により除去体積を算出した.また,表面性状は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行った.周囲気体の種類(空気,窒素,酸素),圧力(1〜760Torr),ポリマー試料温度(25〜150℃)着目し,周囲雰囲気との化学反応,ガラス転移点,(PETで70℃)と試料温度の関係が物質除去に及ぼす影響を調べたが,加工体積に差は見られなかった.また,加工面および加工時の飛散物質をSEMにより観察した結果,加工面では二次元的に配列した突起が加工の進行とともにサイズを大きくしていく様子が観察された.この突起サイズの増加は,隣接する突起との合体のようにも見えたが,これが熱的に誘起・合体したものかどうかは今後の課題である.また,物質除去における飛散物はサブミクロンオーダの直径を持つ粒子として,加工面から飛散していることが加工面周囲に堆積した飛散物の観察からわかった. 今後,高分子材料の分子配向が加工面性状に与える影響を調べるために,二軸延伸PETの他に無延伸PET,さらに熱処理をした二軸延伸PETへの加工実験を行う予定である.
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