1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09750236
|
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
百生 登 富山県立大学, 工学部, 助手 (80239590)
|
Keywords | 凍結保存 / 凍結・解凍モデル / 生残率 / プロトプラスト / 浮遊細胞 / 生体組織 / 凍害保護物質 |
Research Abstract |
生物体の凍結保存技術を確立する基礎研究として,細胞組織の凍結保存における物理化学的現象を理解し,細胞の生死と細胞レベルで生じるミクロ挙動の関連を踏まえた上で,凍結・解凍操作の最適条件を含めその可能性をシミュレーションにより追究した. 前年度は,浮遊細胞の生残率の測定,およびその結果を従来のモデルに組み込み浮遊細胞についてシミュレーションを行い,細胞のミクロ物性(サイズ,膜透過係数)によって至適冷却速度が異なるこが明らかとされた.さらに,凍害保護物質が生存率を向上させること,および至適冷却速度はその濃度により異なることが明らかにされた. 本年度は,まず,浮遊細胞について得られた細胞の傷害とミクロ挙動の関係を生体組織に適用したシミュレーションを行い,生体組織の凍結における熱的寸法効果が細胞の生存状態に及ぼす影響を解析的に明らかにされた.すなわち,冷却表面近傍では細胞は凍結のため死滅し,試料の中心近く,冷却面表面から離れた場所では細胞の脱水による溶液効果により死滅する.その中間で生存の可能性があるが,確率的には僅かであり,生体組織の凍結保存はそのままでは困難であり,凍害保護物質の使用が必須であることが明らかにされた. 最後に,生体組織の凍結保存における凍害保護物質の効果についてシミュレーションを行い,凍害保護物質の濃度が高いほど,試料中心部ほどその効果が高いことが明らかとされた.また,凍害保護物質の効果は冷却速度が遅い場合により顕著に現れ,濃度が低い方が細胞の生存する範囲が冷却面近くまで広がることが明らかとなった.このことから,凍害保護物質の濃度は,試料中心近くで高く,冷却表面近傍では低くすることが効果的であることが示唆された.
|