Research Abstract |
本研究の目的は,ディジタル方式を用いた単板磁気試験法により,準静的な磁化状態とみなせる0.001Hzの超低周波から商用周波帯域における種々の磁性材料の磁気特性を,±3%の精度で測定可能な技術を確立することである.本年度の成果を要約すれば,以下のようになる. 1.単板磁気試験器を用いたディジタル磁気特性測定システムにおける波形制御法 磁気特性測定において,人為的誤差を低減し,かつ,フィードバック時の発信を回避して再現性を向上させるために,ディジタル方式を用いた測定システムを構築しているが,高磁束密度領域のおいて磁束正弦波条件で励磁すると,フィードバック回数が著しく増加する傾向がある.そこで,システム中の各種測定器の入出力特性を測定し,システム全体を等価な電気回路に置換して励磁電圧波形を推定する方法を開発し,その有用性を明らかにした. 2.高磁束密度領域のおける空隙磁束補償法 最近では,機器の小型化のために,高磁束密度材が開発されている.しかしながら,JIS規格の単板磁気試験法では,1.9Tまでの測定法しか定められていない.そこで,高磁束密度における測定精度を検討した結果,1.97Tより大きい領域では,空隙磁束補償が過補償になり,-3%以上の誤差が生じることが明らかになった. 3.超低周波領域の磁気特性測定における信号処理法 通常,磁界の強さは,Hコイルの誘導起電力をアナログ積分することによって求めるが,超低周波励磁の場合は測定時間が長くなり,積分器のドリフトが問題になる.そこで,ディジタル積分方式の有用性を検討した結果,0.01Hzで十分な測定精度が得られるようになった. 4.電磁鋼板のB-H曲線測定における周波数の影響 従来,電磁鋼板のB-H曲線の測定は商用周波数で行われていたが,超低周波測定システムを適用して周波数の影響を検討した結果,市販の0.3mm厚のけい素鋼板においても,0.01Hzと50HzのB-H曲線は,同一のBにおけるHが,最大で10%以上も異なることが明らかになった.
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