1997 Fiscal Year Annual Research Report
弾性領域内の応力による軟質磁性材料の磁化過程に及ぼす効果に関する研究
Project/Area Number |
09750360
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山本 健一 琉球大学, 工学部, 助手 (60284957)
|
Keywords | 軟質磁性材料 / 応力効果 / 磁化過程 / 磁区構造 |
Research Abstract |
本研究は,軟質磁性材料の磁化特性が弾性領域の応力によって受ける効果のうち,十分にはその発生機構が明らかでない応力効果について実験的に検討し,その発生機構を明確化することを目的としている。本年度は実験装置の作製を行い,対象とする応力効果のうち実用的にも重要な材料と考えられ,未だ検討されていない方向性けい素鋼板における消磁応力効果について検討を行った。 ここでは特に,方向性けい素鋼板の圧延方向および直角方向に切り出した試料について検討した。この試料における応力効果についてはあまり検討されておらず,消磁応力効果の特性およびその磁化機構については不明確な状態であった。圧延方向に切り出した試料では,消磁応力効果が明確に観察された。一方,圧延方向直角方向に切り出した試料では消磁応力効果は観察されなかった。しかしながら,その試料に10MPaの張力を常に印加した状態で応力を変化させた場合には,絶対量は圧延方向の特性に比べて小さいものの消磁応力効果が明確に観察された。 以上の結果において消磁応力効果が観察されたケースでは応力変化や磁界印加を通じて,磁区構造がドラスティックには変化せず,消磁の際に得られた基本的な磁区構造を保ちつつ磁化が進行する試料について消磁応力効果が観察されていた。一方,消磁応力効果が観察されなかった圧延方向に対して直角方向に切り出した試料では,消磁で得られた磁区構造は張力印加および磁界印加によって大きく異なるものとなっていた。 これらのことから,消磁応力効果は消磁後の応力変化および磁界印加によって磁区構造が大きくは変化しない場合に限り観察される効果であることが明らかとなった。本検討によって,消磁応力効果の磁化機構を理解する上で重要な知見を得るとともに,材料応用の際に消磁応力効果を避けたい場合に選択すべき材料の具備すべき特性を明確化することができたと考えられる。
|