1997 Fiscal Year Annual Research Report
量子井戸サブバンド間遷移を用いた窒化物半導体モノポーラ光デバイスの基礎研究
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09750389
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
菊池 昭彦 上智大学, 理工学部, 助手 (90266073)
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Keywords | 量子準位間遷移 / ガリウムナイトライド / アルミニウムナイトライド / 結合量子井戸 / 分子線エピタキシ- / 光通信用素子 |
Research Abstract |
窒化物半導体であるGaNとAlNは2.1eV程度の大きな伝導帯オフセットを有することから、近赤外光領域における量子準位間遷移を利用した単極性光デバイスへの応用が期待され、優れた耐環境性や波長安定性を有する光デバイスが実現される可能性を有する。本研究では、GaN/AlN量子井戸構造の伝導帯量子準位間遷移における基礎的な光学特性の理論計算を行い、光通信用波長である1.3及び1.55μm近傍での応用が可能であることを見出した。また、分子線エピタキシ-(MBE)法によるデバイス作製のための結晶成長技術の開発を行った。 計算では、GaN/AlNの伝導帯オフセット値を2.11eVとし、伝導帯に形成される各量子準位の波動関数の重なり積分から、行列要素を計算し、量子準位間遷移における振動子強度f_<ij>(i,jは、量子準位)を見積もった。幅4MLのAlN障壁層を介して隣接する幅6MLと7MLのGaN井戸層から構成される非対称結合量子井戸構造における量子準位間遷移の振動子強度の印加電界強度依存性を求めた。無電界時の遷移エネルギーΔE_<21>、ΔE_<31>、ΔE_<32>は、それぞれ110、920(1.34μm)、及び806meV(1.54μm)であった。無電界時には、ΔE_<31>の振動子強度が支配的であるが、印加電圧の増加に伴い、ΔE_<32>の振動子強度が急速に増加する。しかしながら、電界強度の増加に伴う量子準位シフトにより、振動子強度が最大となる遷移波長は1.34μmに固定され、見かけ上の遷移波長は、印加電圧に対して一定となることがわかった。 実験ではMBE法を用いて、光デバイスを作製する上で必要となる1.4μm/hrの高成長速度においても、優れた電気的、光学的特性を有するGaN単結晶膜を成長する技術を開発した。また、活性領域の作製に最も重要となる原子層レベルの層厚制御と平坦性を得るために、マイグレーションエンハンスドエピタキシ-(MEE)法をGaNの成長に適用し、ピット等の無い良好な表面モホロジーを再現性良く得ることが可能となった。 次年度は、GaN/AlN量子準位間遷移光デバイスの具体的な構造設計と性能予測、及びMBE法による素子の試作を行う。
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[Publications] A.Kikuchi et.al.: "Shutter control of Al contents in AlGaN quasi-ternary compounds grown by RF-MBE" Journal of Crystal Growth. (1998)
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[Publications] N.Fujita et.al.: "Epitaxial growth of GaN with a high growth rate of 1.4μm/hr by RF-radical source molecular beam epitaxy" Journal of Crystal Growth. (1998)
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[Publications] A.Kikuchi et.al.: "Shutter control method for control of Al contents in AlGaN quasi-ternary compounds grown by RF-MBE" Int.Conf.on Nitride Semiconductors,Tokushima,Japan. P1-1 (1997)
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[Publications] N.Fujita et.al.: "Epitaxial growth of GaN with a high growth rate of 1.2μm/hr by RF-radical source molecular beam epitaxy" Int.Conf.on Nitride Semiconductors,Tokushima,Japan. P2-53 (1997)
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[Publications] H.Sasamoto et.al.: "High-speed growth of GaN and GaN/AlGaN short period superlattice quasi-ternary for Al composition control of AlGaN by RF-MBE" 15th Semiconductor Laser Symposium (International). 16 (1998)
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[Publications] 菊池昭彦 他: "量子準位間遷移を用いた窒化物系光デバイスの基礎検討" 第58回応用物理学会学術講演会. 5aR9 (1997)
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[Publications] 佐々本一 他: "エッチングによるサファイア基板平坦化のGaN成長への寄与" 第58回応用物理学会学術講演会. 4aQ6 (1997)
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[Publications] 久志公一 他: "RF-MBE法による1.2μm/hr高成長レートGaNの成長" 第58回応用物理学会学術講演会. 4aQ11 (1997)
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[Publications] 藤田信彦 他: "RF-MBE法におけるシャッター制御によるGaN/AlGaNヘテロ構造の作製" 第58回応用物理学会学術講演会. 4pQ14 (1997)
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[Publications] 菊池昭彦 他: "GaN/AlN系量子準位間遷移光素子の基礎解析" 第45回応用物理学関係連合講演会. 29aZQ4 (1998)
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[Publications] 杉原大輔 他: "RF-MBE法によるGaNのMEE成長" 第45回応用物理学関係連合講演会. 30pZP3 (1998)