1997 Fiscal Year Annual Research Report
知覚運動協応における能動性/受動性による空間位置知覚差の機序となる脳機能の解明
Project/Area Number |
09750479
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 太郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (00260521)
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Keywords | 上肢随意運動 / サッケード / スムースパース-ト / 運動計画 / 注視 / 運動発現 |
Research Abstract |
初年度である平成9年度は心理物理実験を通して知覚運動協応における運動の能動性・受動性が位置知覚に与える影響の実際についてデータを収集した.まず,人間が両眼視や上肢運動によって空間位置を捉える際に用いる生体信号を同定し,実験パラメータを整理するために空間を目の高さの水平面上に限定した実験装置を準備し,この面内を自由に移動可能な電動のXYテーブルを設置,上肢でこのテーブルの移動部をつかんだ状態を維持する.ミラーを介して視覚ターゲットはこの平面と同一平面上にあるように知覚される.この視覚ターゲットも同様に電動のXYテーブルによって移動可能なように設置されている.この実験装置を用いて上肢及び眼球運動による能動性及び受動性の追従実験を行った.実験に際してはこのミラー部にプリズム等を設置することによってプリズム順応等の実験条件についても検証を行った.これら実験の結果,従来は運動開始以前に運動計画が決定されているとされていた上肢の3点間随意運動において,運動中の注視位置の変化によって運動軌跡が変化すること,しかもその変化は連続的なフィードバック性の制御によってではなく,異なるフィードフォワード性の運動計画に切り替わるように軌跡を変化させることが判明した.このことは,随意運動が運動開始時には完成された運動計画を持ってはいないこと,運動軌跡はいくつかのフィードフォワード的な軌跡の素片をリアルタイムに知覚される感覚情報をもとにしてつなぎ合わせるようにして構成されていることを示唆している.こうした制御戦略は眼球運動におけるフィードフォワード要素であるサッケード運動とフィードバック要素であるスムースパース-ト運動の関係に酷似しており,これらの制御戦略との相関をとることで人間の運動制御戦略と運動発現メカニズムについてさらに詳細なモデルを構築できるものと期待される.
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