Research Abstract |
通信,制御,レーダ,電力システム,採譜,時系列分析等の工学分野においては,雑音に埋もれたサイン信号の推定・検出が非常に重要である.古典的な手法として,DFT,short-term DFT等のnon-parametric手法がある.しかし,周知のように,それらは基本周波数の整数倍の周波数点しか分析出来ないことと,非定常信号の解析が困難であると言った欠点を持っている.そのため、LMS,p-power,RLS,カルマンフィルタに基づく適応手法が提案されている.その中,勾配型アルゴリズムとしてのLMSやp-powerアルゴリズムは,計算量が少なくしかも合理的な性能をもつから実用的である.しかし,有色雑音の場合は,その性能が大きく低下してしまう恐れがある.そのため,有色雑音を抑えるような適応アルゴリズムを開発する必要がある. 本研究の次年度では,低次から高次までの統計情報に着目し,平均操作で雑音の影響を抑えられるようなアルゴリズムの開発を試みて来ており,まず,雑音の平均値がゼロであるという(低次)統計情報を用いた新しい勾配型適応アルゴリズムの開発に成功した.現在,高次の統計情報を用いた適応アルゴリズムの検討を行っている. 上述の新しい適応アルゴリズムは,雑音が白色でも有色でもその影響が抑制され,LMSアルゴリズムの性能の低下を有効に食い止めることができる.しかも,アルゴリズムの乗算数は従来のLMSアルゴリズムのと全く同じであり,多少の足算とメモリを必要とするのみである.具体的には,我々はまず有色雑音の場合のLMSアルゴリズムの特性解析を行い,その性能低下の原因を解明した.そして,解析で得られたヒントを武器に新しい誤差評価規範を導入し,勾配型の適応アルゴリズムを新たに構築した.しかも一周波の場合においてその推定性能の近似解析を行った.多くのシミュレーションにより,新しいアルゴリズムの優位性と近似解析の有効性が検証されている.
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