1998 Fiscal Year Annual Research Report
数理モデルを用いた森林樹木による降雨変化過程の定量化に関する研究
Project/Area Number |
09750599
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉田 弘 徳島大学, 工学部, 助教授 (10210717)
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Keywords | 森林水文 / 水質水文 / 降雨遮断 / 降雨水質 / 樹冠通過雨 / 樹幹流 / leaching / 酸性雨緩和 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、簡易降雨シミュレー夕による屋内降雨水質観測実験を行い、降雨遮断過程におけるリーチング量の実測と数理モデル化をおこない、最終的に遮断水貿タンクモデルとして樹幹流と樹冠通過雨の濃度変動の再現を試みた。 本年度は、約6年生のヒノキとクスノキを対象とし、簡易降雨シミュレー夕により約10mm/hr、約15mm/hrおよび約20mm/hrの一定降雨強度を設定し、電気伝導度が0.5μS/cm以下のイオン交換水を原水として、pHがおよそ5.6の自然降雨に加えて、pHが4.8と4.0の酸性雨のケースを設定した。その他の手法は昨年と同様である。その結果、pHが5.6の場合には、昨年同様に樹幹流ではヒノキとクスノキの樹種を問わず、pHとECの両方について林外雨よりも増加した.また樹冠通過雨では、林外雨と比較して明瞭な変化は認められなかった。しかし、pHが4.0の場合にはこれまでと異なってECは減少した点が注目される。 代表的な陽イオン濃度の経時変化について検討したところ、樹幹流に関して、ヒノキではナトリウムイオンが、クスノキではカリウムイオンがそれぞれ卓越してリーチングされた。樹斡流下強度が安定する約60分以降では、いずれの樹種のイオン濃度とも安定しており、定常降雨の実験であることから枝葉に付着した水分量もほぼ定常と考えられることから、リーチング量も一定となることが示された。実験結果に基づいて単位時間当たりのリーチング量は樹冠付着水量のべき乗関数としてモデル化できた。続いて既存の遮断水質タンクモデルにリーチングモデルを導入し、樹幹流の水質変化を算定したところ、実用上の誤差の範囲で良好に観測値と一致した。昨年に引き絖き林外雨に対して樹幹流と樹冠通過雨では陰イオンに濃度変化が認められなかったことから、リーチングされなかったと判断された。
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[Publications] T.Tamura,H.Yoshida & M.Hashino: "Mathematical modeling of estimating the scasonal changes of streamwater nitratc-N concentration" LAHS Publication. (in press).
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[Publications] 吉田弘、端野道夫: "降雨遮断過程における降雨水質変化の計測" 水文水資源学会1998年研究発表会要旨集. 188-189 (1998)