1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09750610
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
上田 孝行 岐阜大学, 工学部, 助教授 (20232754)
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Keywords | 内生的成長論 / 社会基盤投資 / 経済成長 |
Research Abstract |
社会資本整備が経済成長の成否を決める上で果たす役割の重要性については、これまでにそれに関する多くの研究が蓄積されてきている。とりわけ、Solow(1956)の「新古典派経済成長論」が経済成長論の主流を占めてきたが、理論的・実証的な観点から見ていくつかの限界があるとの指摘がでてきた。そこでRomer(1986)以降、近年「内生的経済成長論」の名のもと、研究開発投資による知識資本の蓄積、あるいは学習や研究開発による人的資本の形成などが経済成長の原動力となることを理論的枠組みで捉えた成長論が開発された。この「内生的経済成長論」は、これまでの経済成長論が人工増加や外生的な技術進歩によってのみ説明されていたものとは大きく異なっており、経済変数の成長率がモデルの内部で決定されるものである。特に土木計画的な観点からこの成長論を見てみると、このような内生的成長論の発展を受けて、社会資本整備が経済成長に及ぼす影響について分析してみる必要がある。特に、社会資本整備が人的資本(知識資本)の形成にどのような影響を与えるかという点に焦点を当てる必要がある。 そこで本研究では以上の背景をふまえて、最近の内生的経済成長論の代表的なモデルに社会資本整備の一つとして交通社会資本整備を取り上げ、その経済成長への影響を分析することを試みた。特に、内生的経済成長論のもとでは、交通社会資本の蓄積の遅れによる混雑現象が、第一に、実質賃金としての時間価値が持続的に増大するため混雑に伴う厚生損失も持続的に増大させること、第二に、人的資本形成に当てられるべき時間資源そのものを減少させるために内生的成長を阻害するという二つの現象が生じる可能性がある。これらの二点を分析できる理論的なフレームとして、本研究では一つのモデルを提示した。
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