1997 Fiscal Year Annual Research Report
鉛の同位体比を指標とする土壌生態圏中重金属の移行解析
Project/Area Number |
09750638
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤川 陽子 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (90178145)
|
Keywords | 鉛 / 土壌 / 同位体比 |
Research Abstract |
本研究では、鉛直方向層位別に採取した大阪府及び茨城県の田園地帯の土壌中の鉛濃度及び鉛の同位体比を誘導結合プラズマ質量分析装置で測定・定量した。これは、近年の各種工業や交通網の発達に伴い広がった、微量・多種類の元素による汚染がもっとも顕著に現れるのが、表層土壌であると考えられたためである。実際、我々は主要国道より10km以上離れた大阪府及び茨城県の田園地帯において、土壌の鉛直方向(0-100cm深さ)の元素濃度分布を調査した結果、深さ10-15cmまでの根圏域において鉛の蓄積が認めた。この表層土壌における鉛等微量元素の蓄積については、(1)人間活動に由来する化学フォールアウトの地表面への蓄積、(2)土壌生成過程で土壌固層から溶出した鉛が、植物により経根吸収された後、落葉等と共に地表面に蓄積する、等の機構が考えられた。この中で(1)の化学フォールアウトによる鉛は、その発生源に固有の同位体比(鉛には、質量数204、206、207、208の安定同位体がある)を有しているので、表層土壌に沈着した鉛の同位体比を求められれば、その起源を推定することが可能と考えられた。 測定の結果、田園地帯の土壌表層0-15cmの鉛の起源として、人間活動に由来する化学フォールアウト画分と土壌母材に元来含まれていた画分の2種類があることが判明した。さらに、土壌表層と深部での鉛の同位体比を対比することで、表層土壌に沈着したフォールアウトの中の鉛の同位体比を推定できた。この沈着成分の鉛同位体比と、日本で使用されている鉛鉱等の同位体比を対比することにより、各種の表層土壌に蓄積した鉛の汚染源の特定ができる可能性が示された。
|