Research Abstract |
本研究では,底生生物の底質環境形成に果たす役割について評価を行い,有機汚濁化した底泥の性状的または機能的回復のための諸条件について検討をすることを最終目的とし,本年度は室内実験においてイトゴカイCaptella sp.が底泥の酸素消費量,硫化物生成速度に及ぼすの影響について検討した。 実験はアクリル製水槽(直径5cm,高さ35cm,容量0.7l)を用い,凍結により底生動物を死滅させた底泥0.2l(島根県Y湾)を水槽内に充填し,人工海水0.3lを入れてエアレーションポンプにより曝気(通気量0.1ml・min^<-1>)を行なった。実験条件はCaptella sp.を投入した系(生息系:10,000ind.・m^<-2>)及び投入しない系(コントロール系)を設け,20℃恒温室内で30日間飼育した。実験開始時及び終了時の表層〜3cm,3〜7cm,7〜10cmの底泥を採取し,底泥の酸素消費量(SOD),硫化物生成速度(SPR)を求めた。その結果,実験開始時のSOD24は,各深度共に約5.5mgO2・R^<-1>であったが,終了時には,表層〜3cm,3〜7cm,7〜10cmのSOD24は生息系でそれぞれ2.3,3.0,3.2mgO2・g^<-1>,コントロール系でそれぞれ3.4,3.9,4.1mgO2・g^<-1>であった。実験開始時の底泥のSPRは,各深度共に42μg・g^4・h^4であったが,終了時には,表層〜3cm,3〜7cm,7〜10cmの底泥のSPRは生息系でそれぞれ3.9,18.0,28.6μg・g^4・h^4,コントロール系でそれぞれ22.9,39.0,45.7μg・g^4・h^4であった。これらのことから,Captella sp.の生息により,底質環境を好気的に維持する上で大きな役割を果たし,生物にとって直接的に有害物質となる硫化水素の発生を制御する効果が明らかとなった。
|