Research Abstract |
本年度は,様々な塩害環境下におけるコンクリート中に浸透する塩化物イオン量をニューラルネットワークにより推定する手法を開発した。このニューラルネットワークのシステムは,過去12年間に発表されたデータ等を基に構築したもので,水セメント比,環境条件(暴露塩所,飛来塩分量,水掛かり),暴露経過年を入力すると,コンクリート中の任意位置における塩化物イオン量が推定できる。本ニューラルネットワークシステムでは,塩化物イオン濃度がコンクリート内部において濃度ピーク位置を形成する状況もシミュレートでき,既往の暴露実験によるコンクリート中の塩化物イオン量との比較においても満足のいく精度であることが確認された。また,コンクリート中の鉄筋の塩害による腐食速度は,鉄筋位置の塩化物イオン量と比例関係にあることが既往の研究により分かっているので,このニューラルネットワークシステムを適用し,経時的に鉄筋位置における塩化物イオン濃度の変化する場合の鉄筋の腐食量を推定する手法も開発した。 塩害によるコンクリート中の鉄筋腐食速度に関する実験は,湿度75%,温度20,50,70度の恒温恒湿試験器内において,水セメント比(40,50,60%),塩分量(NaCl:2,4,6kg/m^3),かぶり厚さ(2,4,6cm)を実験変数として腐食速度測定実験を行い,継続中である。なお,同様の実験変数で,屋外暴露による腐食速度測定実験も並列して行っている。 さらに本年度は,沖縄県の海岸沿いに建設し8年経過した実大RC暴露構造物を解体し,コンクリート中の塩化物イオン量や,仕上げの条件と鉄筋の腐食状況との関係についてもデータを蓄積している。
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