1997 Fiscal Year Annual Research Report
高圧XANES測定による圧力誘起4f電子転移の定量解析
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09750736
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
板倉 賢 九州大学, 大学院・総合理工学研究科, 助手 (20203078)
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Keywords | 高圧実験 / X線吸収スペクトル / ダイヤモンドアンビルセル / 価数揺動状態 / セリウム合金 / 4f電子転移 / X線吸収端近傍構造 / 放射光実験 |
Research Abstract |
圧力誘起4f電子転移(Ce価数の圧力依存性)を定量的に評価するために、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)装置により高圧力を加えたCe合金についてCe-L_<III>吸収端近傍構造(XANES)スペクトルを測定する技法を開発した。Ce-L_<III>吸収端(約5.7keV)付近のX線はダイヤモンドによる吸収が極めて大きいため、X線透過距離が0.8mmの超薄型ダイヤモンドをアンビルとして用いた。この超薄型アンビルを貫いてCe合金試料に高輝度X線(放射光)を入射し、入射X線と垂直方向に放出されるX線をガスケットを通して半導体検出器(SSD)で検出する独創的な測定法を考案した。この際、X線の検出効率を高めるために、通常の3倍以上の大きな検出窓をもつDAC装置およびX線脱出距離が約1.0mmの特殊形状Be製ガスケットを新たに設計・製作して用いた。さらに、SSDで検出されるX線の中からCe-L_<III>の吸収(2P→5d電子転移)に伴って放出される蛍光X線のみを分離・蓄積する方法を採用した。 まず、典型的な中間価数物質であるCeO_2について1測定点当たり約30秒蓄積する測定を行った結果、Ce^<3+>(4f^1)とCe^<4+>(4f^0)に対応する2つの吸収ピークを明瞭に分離したXANESスペクトルが実測できた。すなわち上述の測定法により、Ce価数の定量的解析が行える良質の高圧XANESスペクトルを測定できることが明らかとなった。 次に、1GPa程度の圧力下で特異な電気抵抗の圧力変化が現れるβ-Ce_3Al合金相について最大4.6GPaまでの高圧XANES測定を行った結果、この相中でのCeは3.0価のまま変化せず、局在した4f電子状態を保つことが明らかとなった。今後さらに、種々のCe合金相について同様の測定を行うことで、価数揺動状態に由来する異常物性の発現機構を解明できるものと期待される。
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