1997 Fiscal Year Annual Research Report
イオンクラスタービーム法による強磁性半導体薄膜の合成
Project/Area Number |
09750750
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
安達 信泰 名古屋工業大学, 工学部・材料工学科, 助手 (90262956)
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Keywords | 希薄磁性半導体 / クロム化合物 / 薄膜 / 強磁性半導体 |
Research Abstract |
II-VI族希薄磁性半導体において、クロム化合物が強磁性半導体として期待されているがバルク結晶の合成が困難なことからクロムイオンを高濃度に置換した系の磁気的性質は調べられていない。そこで、この物質系において、非平衡物質の合成も可能な薄膜蒸着を試み、磁気的評価を行った。物質には多様な応用性を考え、可視域にバンドギャップがある直接遷移化合物半導体でwurtzite型CdSeを母体としたCdl-xCrxSeを選び、可能な限りの置換を行った。 蒸着はイオンクラスタービーム蒸着装置を用いて、二元(CdSe,CrSe)蒸着によりおこなった。蒸着レートは水晶振動子計により蒸着中にモニターし、クロム組成比の調節を行った。相の同定はXRDにより行い、表面のモフォロジーは原子間力顕微鏡(AFM)を用いた。また、バンドギャップは光透過スペクトルから見積もり、磁気的性質はSOUID磁束計により、5Kから300Kまでの温度範囲、5Tまでの磁場範囲で精密測定した。 基板にはサファイア基板(001)を用いた結果、単相で(001)X線ピークのみが現れる強い配向膜が得られた。x≦0.6まではwurtzite構造を示すピークが観測されたが、それ以上の置換を試みるとNaCl構造の膜ができ、組成はほとんどCrSeに近いものであった。格子定数やバンドギャップのクロムイオン濃度による変化はCdl-xMnxSe薄膜の場合に比べて小さい。磁化測定の結果、膜の飽和磁化ほぼ分析組成に比例し大きくなり、カドミウムがクロムイオンに置換れたと考えられる。組成x=0.4、0.5、0.6の試料に関して130K付近にキュリー点と思われる磁化の増大が観測された。また、化学量論比のずれたCrSeにおいて保磁力4kGを示すヒステリシス磁化曲線を示す強磁性相を新しく見いだした。しかし、飽和磁化の大きさと磁気構造に不明な点があり、現在解析中である。
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