1997 Fiscal Year Annual Research Report
高分子材料の信頼性向上のための破壊・疲労挙動における大気中の湿度の影響の解明
Project/Area Number |
09750771
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
下条 雅幸 東京工業大学, 精密工学研究所, 助手 (00242313)
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Keywords | PMMA(ポリメタクリル酸メチル) / クレイズ / 湿度 / ひずみ速度 / ヤング率 / 引張強さ / 破断伸び |
Research Abstract |
高分子材料はその強度や耐久性にバラツキが大きく、そのため構造材としての“信頼性"を得ることは難しく、強度が重要視される分野へ積極的に適用されることは少ない。 しかし高分子材料の強度を評価するためには、分子量・分子構造等の材料自体の要因の他に、温度・湿度・光などの環境の影響を考慮しなければならず、これが、高分子材料の強度を正確に評価することを難しくしている。本研究では、試料が保管されていた環境の影響、特に大気中の水分がこの強度のバラツキの大きな要因の一つと考え、試料の含有水分量と大気中の湿度の関係に着目した。高分子材料は水を吸収する材料として知られており、アクリル(PMMA)では最大で2〜3%程度の水を吸収するにも関わらず強度に及ぼす湿度の影響に関する系統的な研究は少ない。 そこで、本研究では、様々な湿度中において、試料に引張り荷重下でのクレイズ発生数や長さを調べるために試験片の含有水分量の調整を行った。試験片の含有水分量は、20°Cにおける飽和塩水溶液の平衡水蒸気圧を用いて5種類の湿度に調整した。一定温度に長時間保つために低温高温器(LU-112型ヌバイペック社製)を用いた。 最初にまず、試験片に微小荷重を繰り返し負荷しヤング率に対する湿度の影響について調べた。また、変形時間依存性を調べるためにひずみ速度を変えてのヤング率測定を同時に行った。その結果、ヤング率は湿度が高くなるにつれて減少し、ひずみ速度が高くなるにつれて増加した。またその関係は、湿度に比例しひずみ速度の対数に比例していることが判った。また、湿度とひずみ速度はそれぞれが独立して影響していると推測される。 次に、同様のひずみ速度で引張破断試験を行った。その結果、湿度は破壊強度や破断伸びに強く影響していることが解ったが、その関係は複雑でばらつきも大きいため、明確に説明することができなかった。また、破断後の試験片の表面を観察し、クレイズの発生・成長の様子が、湿度によって複雑に変化していることを確認した。 今後の研究においては、クレイズの発生・成長と湿度の関係を系統的に調べるために破断前におけるクレイズをリアルタイムに観察する試験を行う予定である。
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