1997 Fiscal Year Annual Research Report
光散乱法を用いた透光性結晶のクラック先端近傍転位の観察
Project/Area Number |
09750778
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森川 龍哉 九州大学, 工学部, 助手 (00274506)
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Keywords | クラック / 転位 / 結晶性材料 / 塩化ナトリウム / 応力拡大係数 / 破壊 / 透光性結晶 |
Research Abstract |
本年度はクラック先端におけるクラックと転位の相互作用をより理解し転位がクラックの進展にどのような影響を及ぼすかを検討するため,塩化ナトリウム結晶を用いてクラックの進展とそれに伴ったすべり変形による転位密度の増加の評価を行った.すべり変形によって生じるすべり帯の観察には透光性結晶である塩化ナトリウム結晶の特性を生かして偏光顕微鏡を利用した光弾性二次元像を,転位密度の評価には腐食によるエッチピットを用いた.また,バルク材料における転位の三次元分布を観察するための光散乱を利用した観察装置を構築中であるが,転位以外の材料中の微小欠陥からの散乱光の影響のため転位の把捉が困難になると予想され現在解決の糸口を模索中である.これまでに得られた知見について以下に列記する. 1.双結晶を用い結晶粒界に向かってクラックを進展させたときのクラック前方の転位密度および応力拡大係数の変化を調べ,次のことがわかった.クラックの進展に伴いクラック先端より転位が発生しすべり帯が形成される.単結晶でクラックを進展させたときに比べ,双結晶の場合はクラックが粒界に近づくにつれ転位密度が増加し応力拡大係数もクラックが粒界に衝突するまで次第に増大していること,また,クラックの進展速度が遅くなっていることから,粒界に堆積し密度の大きくなった転位群によりクラックの進展が阻止される効果がある. 2.固溶体硬化を利用して転位の易動度を抑制するために塩化ナトリウム結晶に臭化ナトリウムを固溶させた試料を作製し1.と同様の実験をしたところ,純粋な塩化ナトリウム結晶における結果に比べ,クラックは速く進展しクラック前方の転位密度も小さくなった.また,臭化ナトリウムの濃度を大きくするとより結晶が破壊されやすくなった.この結果は結晶粒界によるクラック進展阻止の効果が転位を仲立ちにしていることを示すもので,今後はより定量的な見地からの検討が必要であろう.
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