1997 Fiscal Year Annual Research Report
糖類アモルファス構造によるタンパク質熱安定化のための凍結乾燥操作論の構築
Project/Area Number |
09750826
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 哲夫 京都大学, 大学院・工学研究科, 助手 (50243043)
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Keywords | 凍結乾燥 / アモルファス / 糖 / タンパク質 / 熱安定化 / XRD / 水素結合 / FT-IR |
Research Abstract |
本年度は、主として糖-タンパク質間の相互作用の検討を行ったので,その概要を述べる. モデルとなる糖,酸素としてそれぞれスクロース,LDHを用い,スクロース濃度3.5mg/ml,酵素濃度1,4,10,30mg/mlの4種類の水溶液を調製した.この水溶液を液体窒素で瞬間凍結し,-30℃で24時間凍結乾燥し,さらに0℃で10時間凍結乾燥した.水分活性を調製の後,試料を窒素雰囲気中,65℃で保存した.酵素活性の経時変化を調べるため,保存期間0〜5日における酵素活性を測定した.糖の安定化作用と結晶化度との関係を調べるため,X線回折(XRD)装置を用いて,保存前後の試料のXRDスペクトルを測定し,試料中の糖の結晶状態を調べた.また,赤外線吸収分析装置(FT-IR)を用いて酵素のアミド。,アミド「のピーク波数を測定し,ピーク位置のシフトを調べることにより水素結合形成の度合いについて検討した.なお,水とアミド。のスペクトルは重なるので,重水置換した試料で分析を行った.さらに,試料の含水率をKarl-Fischer水分計を用いて測定した.XRDならびにFT-IRスペクトルの測定結果より,糖がアモルファス状態の試料(アモルファス試料)では糖が結晶化した試料より熱安定化作用が高いこと,またアミド。,アミド「のピークシフトが顕著であることがわかった.さらに含水率の測定結果より,アモルファス試料中の水分子の量は酵素本来の結合水量よりはるかに少ないことがわかった.このように含水量が極めて低い状態でアミド基のピークシフトが生じていることは,糖-酵素間に水素結合が生じていることを強く示唆する.この水素結合が酵素の熱安定化に寄与していると考えられる. この他,凍結乾燥条件が酵素活性保持に与える影響を検討するための予備的な実験として,凍結温度を変えて試料作製を行う実験などを実施した.
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