1997 Fiscal Year Annual Research Report
制限空間内相転移現象の特異性を活用したナノ細孔径・幾何特性同定手法の開発
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09750827
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮原 稔 京都大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60200200)
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Keywords | ナノ細孔 / 毛管凝縮 / 凝固点変動 / 分子動力学法 / モンテカルロ法 / 細孔径分布 / メソポーラスシリカ |
Research Abstract |
本研究では,細孔径評価に一般に用いられる細孔内凝縮現象に加えて,これまでに全く解明の手の及んでいなかった細孔内凝固現象を組み合わせることで,幾何情報を含めたナノ細孔特性を評価可能な手法の開発を目指している.本年度は第一段階として,細孔単独要素を表現する理想実験系として分子シミュレーションを主に用い,細孔内での固液・気液転移挙動を分子レベルで解析した上で,その相転移機構を推定した. 1.分子シミュレーション(理想実験系) 細孔形状,細孔サイズ,細孔壁ポテンシャル強度,平衡相対圧力等を種々に設定した系での凝縮および凝固の分子動力学シミュレーションを,パーソナルスーパーコンピュータで行い,ナノ細孔内相転移現象を分子レベルで追跡した. 2.細孔内相転移メカニズム(細孔特性と相転移点の因果関係) (1)気液相転移現象:凝縮に要するポテンシャルギャツプを補償する要因は,細孔内分子集団が感じる細孔壁ポテンシャルと,有曲率海面によるポテンシャル低下の和で表されるはずであり,この概念を基礎にモデルを行った.シリンダ状ナノ細孔内気液相転移現象について,構築したモデルは理想実験系の結果を良好に表現可能となり,モデル化に成功した. (2)固液相転移現象:モンテカルロ法及び分子動力学法によるシミュレーション検討を続行中である.これらの知見を基礎に,細孔内で分子集団が感じるポテンシャルをバルク流体に仮想的に適用して得られる凝固点を解析の起点とし,実際の凝固点の,この起点からの偏倚を幾何学的阻害効果として抽出した上で,細孔形状とサイズを含めた定量的因果関係を今後検討してゆく.また,超均質メソポーラスシリカ中の単純流体について,示差熱量計による凝固点測定手法を検討した結果,精度よく凝固点を得る手法をこれまでにほぼ確立した.次年度は,こうした実在系でのモデル検証も併せて行ってゆく予定である.
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