1997 Fiscal Year Annual Research Report
多孔体のミクロケージ内でのヘテロポリ酸分子の合成と水中で活性な固体酸触媒の開発
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09750838
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
向井 紳 京都大学, 大学院・工学研究科, 助手 (70243045)
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Keywords | 固体酸触媒 / ヘテロポリ酸 / Y型ゼオライト / 固定化触媒 / フェノール樹脂 / ノボラック樹脂 / 炭化フェノール樹脂 |
Research Abstract |
ヘテロポリ酸(HPA)は強い酸性を有し、耐熱性も比較的高く、水和反応や加水分解反応などの水が関与する反応に対し高い活性を示す。HPAは水への溶解度は高いが、その分子径の大きさ(約1nm)を利用して担体に固定化することができれば、液相用固体酸触媒として利用することが可能となる。申請者はY型ゼオライトを担体としてそのスーパーケージ(径約1.3nm)内でHPAを直接合成することでHPAの包含固定化に成功している。しかし、Y型ゼオライトは耐酸性がそれ程高くないため、得られた固定化触媒が利用できる反応系は限定される。そこで、本研究はHPAを耐酸性の高い多孔性の炭素材料へ包含固定化することを目的に実施した。 担体に用いた炭化フェノール樹脂は、まずフェノールとホルムアルデヒドとを、購入したウォーターバス中で塩酸を触媒として反応させてノボラック樹脂とし、その後硬化剤を添加して硬化させた後炭化することにより合成した。得られた炭化物は購入したボールミルを用いて粉砕し、それに純水とHPAの原料を加えて加熱して固定化触媒を得た。得られた固定化触媒は温純水で洗浄、購入したフィルターマニホルドで濾過するという操作を繰り返し、洗浄にともなう包含量の変化を測定した。その結果、この手法により多くのHPAが炭化物中に包含されることが明らかになった。しかし,炭素とHPAとの親和性が高いため、炭化物外表面に多くのHPAが吸着し、それが洗浄を繰り返す間に徐々に溶出することがわかった。 そこで、ノボラック樹脂合成時にHPAを原料に加え、樹脂合成段階での包含を試みた。HPAは強い酸性を有し、樹脂合成の触媒としても働くため、HPAは樹脂構造中に取り込まれやすいものと思われる。この様にして得られた樹脂に硬化剤を加えて硬化させ、炭化することにより固定化触媒を得ることに成功した。得られた固定化触媒に対して同様な洗浄操作を行った結果、2回目の洗浄操作以降は、HPAがほとんど溶出しないことがわかった。この固定化触媒の反応活性を酢酸エチル合成をモデル反応として評価した結果、担体の細孔の入口サイズが小さいために固定化触媒の活性は均相のHPAと比較して小さいものの、炭化温度、硬化剤の種類および添加量を調節することで、均相の30%程度まで活性を向上させることが可能であることが明らかになった。 以上により、HPAを炭化フェノール樹脂中に包含することで、水が関与する反応に対して高い活性を有する固体酸触媒の開発に成功した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Shin Mukai: "The Development of a Solid Acid Catalyst which Catalyzes Aqueous Phase Reactions by the Immobilization of 12-Molybdophosphoric Acid in the Super Cages of Y-type Zeolite" Proc.of the Int.Symp.on Zeolites and Microporous Crystals (Tokyo), p.190,1997. 1. 190-190 (1997)
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[Publications] Shin Mukai: "Preparation of Encaged Heteropoly Acid Catalyst by Synthesizing 12-Molybdophosphoric Acid in the Supercages of Y-type Zeolite" Appl.Catal.A:General. 165. 219-226 (1997)