1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09750879
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
前田 拓也 徳島大学, 工学部, 助手 (40270300)
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Keywords | 殺芽胞剤 / 発芽阻害作用 / 殺芽胞活性 / 細胞破壊作用 / 抗菌剤 / 第4アンモニウム塩 |
Research Abstract |
本研究は、ダイマー型アルキルピリジニウム、4,4′-(1,6-へキサメチレンジオキシカルボニル)ビス(1-ドデシルピリジニウムアイオダイド)の殺芽胞機構の解明を目的とした。本薬剤は、B.subtilisに対しpH5〜8.5及び10〜50℃の範囲でほぼ一定の高い殺芽胞活性(最小殺芽胞濃度(MSC)=3〜5μM)を示し、その作用機構はpHや温度の影響を受けにくいということが判明した。また、Na^+、Mg^<2+>、Ca^<2+>等の金属カチオンによって活性阻害されないことから、カチオン性の本薬剤の作用部位は、単に芽胞外殻部に表在したアニオン性のものではないことが示された。B.subtilisの芽胞死滅速度について検討した。30分間の接触(薬剤濃度 4.2μM)では芽胞数に大きな減少はなく、同条件下 5〜60分間の接触時間で殺芽胞活性がほぼ同じであったことから、添加後、急速に吸着した薬剤が芽胞と共に回復培地中にキャリーオーバーされ、発芽阻害又は発芽後成育阻害したと考えられた。さらに、殺芽胞曲線から1mlあたり10^6個の芽胞を99%死滅させるのに、5μMで4.3分、100μMで15.6分(ともに最大死滅速度)となり、薬剤濃度が高い程、急激に殺菌速度が増大することが確認された。エキソスポリウムを最外殻構造とするB.cereus、B.brevisと、エキソスポリウムをもたないB.subtilis、B.pumilusに対して殺芽胞作用を調べた結果、本薬剤は芽胞構造に関係なく高い殺芽胞活性(MSC=5〜7μM)と細胞破壊活性(臨界ベシクル化濃度(CVC)=4〜7μM)を示した。両者に対してMSC値とCVC値にあまり差がないことから、細胞破壊作用は非常に強力かつ急速であること、エキソスポリウムとスポアコートに共通する構造又は成分をもつ部分が作用部位であることが示された。走査型及び透過型電子顕微鏡による観察はこれらの結果を反映していた。すなわち、同条件での薬剤処理で芽胞表層にブレッブが形成され、スポアコートやエキソスポリウムが脱離している様子が見られた。
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