1997 Fiscal Year Annual Research Report
部分置換したスピネル型リチウムマンガン酸化物のリチウム拡散挙動
Project/Area Number |
09750897
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
生田 博将 東京工業大学, 工学部, 助手 (80242270)
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Keywords | リチウム二次電池 / 拡散係数 / スピネル構造 |
Research Abstract |
これまで、遷移金属で置換したスピネル型リチウムマンガンLi[M_yMn_<2-y>]O_4(M=Cr,Co,Ni,Al)のリチウム二次電池正極がサイクル特性が良好であることを報告してきたが、その詳細な結晶構造・物性・電気化学的特性については不明が部分が多い。そこで、本研究ではLi[M_yMn_<2-x>]O_4(M=Cr,Co,Ni,Al)を合成し、これら物質の構造あるいは化学拡散係数に対する依存性を解明することを目的とする。 試料の合成については、炭酸リチウム、炭酸マンガンおよびほかの金属の炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩などの塩を所定の金属比で混合し、これをアルミナボ-ト上で400°Cで熱分解を行ない、その後、750°Cで3日間焼成を行なった。合成を行なった試料の相同定はCuKα線を用いた粉末X線回折により行なった。また、ICPによる組成分析の結果、ほぼ仕込み組成に等しいことを確認した。そして、合成を行なった試料、導電材のアセチレンブラックおよび結着材のPTFEを75:20:5の重量比で混合し、フィルム状に圧延した電極について、化学拡散係数の算出を電流パルス緩和法により行なった。なお計測は電流密度0.5mA/cm^2のパルスを10秒間印加し、その後の電位の径時変化を10分後までデジタルマルチメータで計測することにより行なった。 Li_x[M_yMn_<2-y>]O_4の各試料の化学拡散係数のリチウム組成xに対する依存性は、0.5<x<1の領域ではほぼ一定であり、x=0.5付近で1桁程度上昇することが確認された。また、x<0.5の領域の化学拡散係数は0.5<x<1の領域の領域の化学拡散係数に等しくなった。一方、置換金属組成に対する化学拡散係数の変化については、Li_xMn_2O_4が10^<-10>cm/s程度の化学拡散係数を示すのに対して、例えばCrで置換した試料については、Li_xCr_<1/6>Mn_<11/6>O_4の場合は10^<-9>cm/s程度、Li_xCr_<1/3>Mn_<5/3>O_4の場合は10^<-8>cm/s程度というように、置換金属の組成が増加するにつれ化学拡散係数の値は増加した。一方、X線回折のRietveld解析の結果より、置換金属の組成が増加すると格子定数が減少するのに伴い、八面体位置にある遷移金属イオンと酸化物イオン間の距離が減少したことが確認できた。この結果より遷移金属イオンと酸化物イオン間の結合が強化されるの対して、リチウムイオンと酸化物イオン間の結合が弱まり化学拡散係数が上昇したものと考えられる。
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[Publications] M. Wakihara: "Chemical diffusion coefficient of lithium in LiM_yMn_<2-y>O_4(M=Co and Cr)" Solid State lonics. 86-88. 907-909 (1996)
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[Publications] M.Hosoya: "The Defect Structure Model in Nonstoichiometric LiMn_2O_<4-8>" J.Electrochem.Soc.144(4). L52-L53 (1997)