Research Abstract |
反応性スパッタリング法により,基板温度400℃,窒素流量比8%,スパッタガス圧5mTorrの条件下にて,極薄い(膜厚4nmまで)TiN薄膜の作製及び評価を行った。薄膜XRD測定の結果,厚さ10nmの膜までは回折ピークが見られ,結晶性の膜であることが確認された。それ以下の厚さの膜についてはピークは検出できなかったが,同様に結晶性であると推察される。これらの薄膜についてはXPSを用いて評価した結果,最も薄い4nmの薄膜についても,極表面の酸化物層のArエッチングによる除去後は,TiNの結合状態にあることを確認できた。次に,膜厚と抵抗率の関係は,Fucks-Sondheimerの理論値と一致することが判明したので,極薄い状態になっても,本質的に変化していないことが確認できた。また,4nmの厚さにおいても抵抗率が約70μΩcmとバルクTiNの抵抗率(22μΩcm)に近い値を示すことが判明した。したがって,適切な堆積条件を選択することにより,極めて薄い状態まで,膜の連続性を維持できると言える。次に可視光透過スペクトルを調べたところ,波長約500nmの所で最大値を示すフラットな形状であった。ガラス基板による光吸収分を差し引いて,各薄膜試料の最大透過率(Tmax)を求めると,最も薄い4nmの試料でTmaxは79%,11nmの試料では64%であった。Tmaxとシート抵抗との関係は,膜厚の増加とともに抵抗は小さくなるが,有色であるため,同時に生じる透過率の低下が問題と思われた。透明導電膜に要求される物性値は用途により大きく異なるが,今回の結果の中で,シート抵抗が123Ω/□,Tmaxが76%の試料及びシート抵抗が43Ω/□,Tmaxが64%の試料等は比較的良好な物性値であると思われる。また,TiNの化学的安定性等の特性も考慮すると,透明導電膜として適用可能ではないかと考えている。実用的には,より低温での膜堆積が好ましいと思われるので,基板温度の低温化についても検討したい。
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