1997 Fiscal Year Annual Research Report
二次元層空間において分子制御された新規発光材料の研究
Project/Area Number |
09750917
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上田 恭太 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (50271862)
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Keywords | スメタクイト / 二次元層状構造 / インターカレーション反応 / Na^+-モンモリロナイト / 1, 10-フェナントロリン / 希土類ビス錯体 / 有機-無機複合体 / 光増感作用 |
Research Abstract |
二次元層状構造を有するスメタクイトなどの粘土鉱物ではインターカレーション反応によって層間カチオンが“嵩高い配位子"を持つ希土類錯体と容易に交換し、均一な溶媒や結晶では認められない物性や特異な分子間相互作用の生じることが期待される。本年度は、まず、単結晶X線回折法により1, 10-フェナントロリンを配位子とした希土類ビス錯体(Eu (phen)_2^<3+>)の分子構造を明らかにし、さらに、Eu (phen)_2^<3+>とTb (phen)_2^<3+>をNa^+-モンモリロナイト(MT)層間に同時吸着した有機-無機複合体の光学的特性を評価し、Tb (phen)_2^<3+>を吸着したことによる発光特性への影響について検討した。 ICPの結果より、MT層間へのEu^<3+>、Tb^<3+>錯体吸着量比は溶液中の濃度比とほぼ同じであることがわかり、Eu^<3+>、Tb^<3+>錯体に対する選択性は全く認められなかった。また、希土類錯体の分子サイズからMT層間中に取り込まれた錯体同士は非常に隣接することが示唆された。 紫外励起されたMT-Eu, Tb (phen)_2^<3+>複合体は、592、615、700nm不均一にEu^<3+>による赤色発光(^5D_0→^7F_<1, 2, 4>)と、489、544nm付近にTb^<3+>による緑色発光(^5D_4→^7F_<5, 6>)を示した。得られた発光スペクトルにおいて、Eu^<3+>による赤色発光と比較してTb^<3+>からの発光は著しく弱かった。さらに、MT-Eu, Tb (phen)^<3+>およびMT-Eu(phen)_2^<3+>複合体において観測されるEu^<3+>の^5D_0→^7F_2遷移に帰属される発光強度(615nm)のEu(phen)^<3+>の吸着量依存性を検討したところ、同じEu(phen)^<3+>の吸着量においてMT-Eu, Tb(phen)_2^<3+>の発光強度が著しく増大することが認められた。これは、Tb (phen)_2^<3+>がEu (phen)_2^<3+>に対して光増感作用を起こしているものと考えた。 したがって、来年度はこの光増感作用の機構を明らかにするとともに、Tb (phen)_2^<3+>の代わりに他の希土類ビス錯体を用いて光増感作用を検討する。
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