1997 Fiscal Year Annual Research Report
リチウムが可逆的に侵入-脱離する金属間化合物に関する研究
Project/Area Number |
09750923
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
坂口 裕樹 鳥取大学, 工学部, 助教授 (00202086)
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Keywords | リチウムイオン二次電池 / 負極材料 / Mg_2Ge / 金属間化合物 / メカニカルアロイング / アモルファス / 電池充電容量 / 電池サイクル寿命 |
Research Abstract |
リチウムイオン二次電池の新しい負極材料の開発を目的として、最近,リチウムが格子間に可逆的に侵入-脱離するような金属間化合物の探索がなされた。なかでもCaF_2型立方晶のMg_2Geは、その電池充・放電容量が従来の炭素材料のそれらと比較して2倍以上もあることが見いだされている。しかしこの化合物は,リチウムの挿入-脱離サイクルを繰り返すと次第に微結晶化するため、二次電池の性能において極めて重要なサイクル寿命を低下させる要因となる。この微結晶化は、リチウム挿入時の格子膨張による内部応力の増大に起因すると考えられる。そこで本研究では、メカニカルアロイング(MAと略す)により化合物の形態を変化させる(アモルファス化)ことで内部応力を緩和させる試みを行った。これにより、炭素材料より充・放電容量に勝りリサイクル寿命に優れたリチウムイオン二次電池負極材料の創製をめざす。 MA処理10時間毎のX線回析の結果、20時間程度のMA処理により比較的結晶性の良いMg_2Geが単一相で得られることがわかった。Mgは蒸気圧が高いため、通常の治金的手法ではこの化合物の合成は難しいが、MAを用いることで容易に合成できることを見い出した。得られた試料の組成はMg_<2.0>Geであり、容器等からの汚染の影響は極めて小さいことを確認した。また、MA処理時間が長くなるほど回析ピークがブロード化し、化合物の形態が変化していくことも示された。MA処理20時間の試料を試験電極に用い充放電試験を行ったところ、充電容量は約950mAhg^<-1>であり、理論容量(1139mAhg^<-1>)に近い値が得られた。充電済(リチウム挿入済)電極と、充電前の電極のX線回析図の比較より、充電後の試料の各回析ピーク充電前のものよりも低角側にシフトしていることがわかった。このことは結晶格子が伸びていることを示しており、リチウムは電極表面に折出しているのではなくMg_2Ge格子間に侵入していることが示唆された。電極表面上へのリチウムの折出が見られないことは,SEM観察からも確認された。この試料は、治金的に合成された試料に近い濃度でリチウムが貯蔵されているにもかかわらず、格子定数の伸びは0.34%であり、治金的合成試料について求められた0.47%と比較して約3割も小さいことがわかった。これは、この試料の結晶化度の低さに起因するものと考えられる。したがって、さらに結晶化度を低下させることで、格子膨張が抑制された、すなわちサイクル寿命に優れた電極材料を得る可能性が示された。
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