1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09750927
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
井手本 康 東京理科大学, 理工学部, 講師 (20213027)
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Keywords | リチウム二次電池 / 正極 / 標準生成エンタルピー / 溶解熱 / カロリーメトリー / 電池特性 / リチウム含有マンガン酸化物 / スピネル相 |
Research Abstract |
リチウム二次電池正極材料の熱力学データーを得ることにより、材料の化学安定性、相平衡などの知見を得て、より高性能な正極材料を作製するための指針を提供することを目的としている。本研究は、LiMn_2O_4のLiとMnの比率を変化させると同時に、各Li組成においてアニール処理を施しMnの価数を制御し、Li組成やMnの価数の変化が正極特性、熱力学的な安定性にどのように影響するかを検討した。まず、試料の組成、Mnの価数、格子定数を決定した後、カロリーメトリー法で溶解熱を測定することにより、標準生成エンタルピーΔ_fH°を算出し、物質の熱力学的な安定性を検討した。また、これを正極に用いて、3電極式セルにより正極特性を評価した。これらの結果を比較し、熱力学的安定性と正極特性の関係を検討した。合成した試料はいずれもスピネルの単一相試料であり、Liの組成が増えると、Mnの価数が増加し、格子定数aは減少した。このことから得られた試料はLi_<1+x>Mn_<2-x>O_4と表され、x=0,0.03,0.06,0.10であった。さらに得られた試料についてアニール処理を行い、Mnの価数を変化させた。各試料について溶解熱を測定した結果、Li組成の増加、Mnの価数を増加に伴い、Δ_fH°は減少し熱力学的に安定化する傾向がみられた。さらにΔ_fH°のMnの価数に対する依存性はLi組成が少ないほど顕著であることが分かった。また、電池作動試験を行ったところ、Li組成が増加するに従って、また、同一組成においてはMnの価数が増加するに従って、サイクルに伴う放電容量の減少が抑えられた。このサイクル特性と熱力学的な安定性を比較したところ両者に良い相関が見られた。よって、熱力学的に安定な物質を作製すれば、正極特性を向上させ得ることが示唆された。現在、これらの関係をさらに検討すると共に、これを指針として正極材料の探索を行っている。
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