1997 Fiscal Year Annual Research Report
低原子価金属塩を用いる有機ケイ素化合物の活性化と反応
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09750929
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 肇 筑波大学, 化学系, 助手 (90282300)
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Keywords | ケイ素・銅交換反応 / 有機ケイ素化合物 / 有機銅化合物 / アルキニルケトン / 1,4-還元 / 交差カップリング反応 / オルソゴナル合成 |
Research Abstract |
近年の有機合成において有機銅化合物は非常によく用いられる有機金属反応剤一つであるが,有機銅化合物を合成する方法はこれまで限定されていた。有機ケイ素化合物の多くは空気中でも安定であり,空気中の酸素・水分で容易に分解する有機リチウムなどに比べ合成・入手が容易である。もし有機銅化合物を合成する前駆化合物として有機ケイ素化合物を使うことができれば,実験操作等の簡便さという点から有益であるが,通常の有機ケイ素化合物から有機銅化合物を調製した明確な例は,これまでに報告されていなかった。しかし研究代表者はアルキニルシランやヒドロシランなどの有機ケイ素化合物が,極性溶媒中では塩化銅(I)などの一価の銅塩とスムーズに反応し,対応する有機銅化合物を与えることを新たに見いだした。さらに有機銅反応剤を有機ケイ素化合物からケイ素銅交換によって生成させることで,有用な有機合成反応を見つけることができた。アルキニル銅をアルキニルシランからケイ素銅交換によって系中で生成,反応させることで,アルキニル銅を単離することなしに,触媒量の塩化銅を用いてアルキニルシランを直接アシル化することができた。またヒドロシランにおいても類似のケイ素銅交換が進行することを見つけ,それを利用してα,β-不飽和カルボニル化合物の選択的1,4-還元に成功した。有機ケイ素化合物と有機ハロゲン化物との交差カップリング反応は,有機合成的に有用な反応である。今回我々が見いだしたケイ素銅交換を利用すれば,既存の方法では必須であったフッ化物イオンなしで有機ケイ素化合物と有機ハロゲン化物との交差カップリング反応が実現できた。またこの反応を利用してオルソゴナル法に基づく有機電子材料の効率のよい合成法を開発することができた。
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[Publications] Hajme Ito, Kikuo Arimoto, Hiro-omi Sensui, and Akira Hosomi: "Direct Alkynyl Group Transfer from Silicon to Copper:New Preparation Method of Alkynylcopper(I)Reagents" Tetrahedron Letters. 38巻22号. 3977-3988 (1997)
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[Publications] Hajme Ito, Hiro-omi Sensui, Kikuo Arimoto, Katsukiyo Miura, and Akira Hosomi: "New Access to Cross-Coupling Reaction between Arylsilanes or HeteroarylSilanes and Aryl Halides Mediated by a Copper(I) Salt" Chemistry Letters. 639-640 (1997)
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[Publications] Hajme Ito, Tomoko Ishizuka, Kikuo Arimoto, Katsukiyo Miura, and Akira Hosomi: "Generation of a Reducing Reagent from Copper(I) Salt and Hydrosilane.New Practical Method for Conjugate Reduction" Tetrahedron Letters. 38巻51号. 8887-8890 (1997)