1997 Fiscal Year Annual Research Report
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09750931
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石黒 勝也 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (40202981)
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Keywords | スピンクロスオーバー / ビラジカル / 電子構造変換 / 酸塩基平衡 / 分子磁性 / pHセンサー / サイクリックボルタムメトリー / 電子移動 |
Research Abstract |
分子磁性の応用として、スピン状態の変換により応答するスイッチング・記憶素子の開発に興味が持たれている。スピンクロスオーバー錯体で見られるような、集合状態で環境の変化や分子間相互作用により誘起される協同的相転位を有機化合物で実現するためには、極性・酸性度などの特性が大きく異なる準安定な電子状態が存在するような化合物を分子設計する必要がある。私は、電子供与性および受容性をもつ二つのラジカルが交差共役したビラジカル種(D^・-A^・)と、分子内で一電子移動した閉殻構造の双極イオン(D^+-A^-)の間の可逆的な変換に着目し、酸一塩基平衡によりスピン多重度が変換する分子の開発について検討した。 ニトロニルニトロキシドの2位と2,6-ジ-tert-ブチルフェノールの4位がカップリングした化合物(D^・-AH)を二酸化鉛により酸化して三重項種ビラジカル(D^・-A^・)を得た。一方、一電子酸化すると、閉殻構造をもつカナオン(D^+-AH)が調製できた。両者は、スピン多重度の異なる共役酸・塩基の関係にあり、これらの溶液に適当な酸や塩基を加えると、相互変換が吸収スペクトル及びサイクリックボルタムメトリーから観測された。この酸塩基平衡のpK_a値は、置換ビリジンを加えた系での平衡定敷から、アセトニトリル中で約10.5と決定された。従って、このD^+-AHは、フェノールラジカルカナオン(pK_a=1)と通常の置換フェノール(pK_a=19〜27)の中間の酸性度をもち、ピクリン酸(pK_a=11)と同程度の強酸である。この原因は、熱化学的サイクルによる見積もりから、ビラジカル(D^・-A^・)と双極イオン(D^+-A^-)のエネルギーギャップにあることが示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] K.Ishiguro: "Acid-Base Equilibrium Between Phenoxyl-Nitronyl Nitroxide Biradical and Closed-Shell Cation.A Magnetic pH Sensor." J.Am.Chem.Soc.119. 3625-3626 (1997)
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[Publications] K.Ishiguro: "Preparation and Property of 2-(3',5'-Di-tert-butylphenyl-4'-oxyl)-4,4,5,5-tetramethyl-4,5-dihydro-1H-imidazole-3-oxide-1-oxyl" Mol.Cryst.Liq.Cryst.306. 75-80 (1997)
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[Publications] T.Nojima: "Dramatic Change of Carbonyl Oxide Reactivity by Potent Electron-Withdrawing Trifluoromethyl Group" J.Org.Chem.62. 2387-2395 (1997)
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[Publications] T.Nojima: "Mechanistic Study on the Reaction of Phenyldiazomethanes with Singlet Oxygen : Formation and Cycloreversion of 1,2,3,4-Dioxadiazole Intermediates." J.Org.Chem.62. 6911-6917 (1997)
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[Publications] K.Ishiguro: "Novel Aspects of Carbonyl Oxide Chemistry" J.Phys.Org.Chem.10. 787-796 (1997)