1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09750931
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石黒 勝也 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (40202981)
|
Keywords | スピンクロスオーバー / ビラジカル / 電子構造変換 / 酸塩基平衡 / 分子磁性 / pHセンサー / サイクリックボルタムメトリー / 電子移動 |
Research Abstract |
近年、新規な磁性スイッチング・記憶材料として、圧力・温度の変化や光照射などによりスピン状態が変化するスピン・クロスオーバー錯体が注目を集めている。このような特性を単一の有機分子で発現させるために、電子供与性および受容性ラジカルが交差共役した三重項ビラジカル種(D゚-A゚)の設計・合成・評価について検討した。この型のビラジカルは、分子内電子移動により一重項双極イオン構造(D^+-A〓-)を与え、両者は極性や酸・塩基特性などで大きな違いをもつことから、相対的な安定性が環境に影響される。一例として、A゚がフェノキシル、D゚がニトロニルニトロキシドである基底三重項ビラジカルが、酸性溶液中で、双極イオンがプロトン化された一重項カチオン構造(D^+-AH)をとることを見出した。このスピン・クロスオーバーを伴う酸・塩基平衡を評価する上で最も重要な熱力学的パラメータであるカチオン(D^+-AH)の酸性度(pKa)について、3つの独立な決定法を開発し、アセトニトリル中で約10.6と決定した。これは、溶液のpHによってスピン多重度が変化する安定な有機化合物の初めての例であり、磁気的性質によりpHを検知する分子センサーとしての応用が期待される。また、この変換は、スピン反転、分子内電子移動、プロトン移動の3つの素過程から記述できるスピン禁制イオン反応であり、その機構は有機反応論的見地だけではなく、スピン状態変化を利用する機能性磁性材料の新規な動作原理としても興味がもたれる。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] K.Ishiguro: "Acid-Base Equilibrium Between Phenoxyl-Nitronyl Nitroxide Biradical and Closed-Shell Cation.A Magnetic pH Sensor." J.Am.Chem.Soc.119. 3625-3626 (1997)
-
[Publications] K.Ishiguro: "Preparation and Property of 2-(3', 5'-Di-tert-butylphenyl-4'-oxyl) 4, 4, 5, 5-tetrametthyl-4, 5-dihydro-1H-imidazole-3-oxide-1-oxyl" Mol.Cryst.Liq.Cryst.306. 75-80 (1997)
-
[Publications] K.Ishiguro: "Novel Aspects of Carbonyl Oxide Chemistry" J.Phys.Org.Chem.10. 787-796 (1997)
-
[Publications] K.Ishiguro: "Redox Properties of Hydroxyphenyl Nitronyl Nitroxide," Novel Trends in Electroorganic Synthesis. 83-86 (1998)
-
[Publications] H.Yokoi: "In-Cage Formation of Carbanions in Photoinduced ET Reaction of Csrboxylates Ions." J.Am.Chem.Soc.120. 12453-12458 (1998)
-
[Publications] H.Yokoi: "Formation of σ-and π-Type Dimer Radical Cations by the Photochemical One-Electron Oxidation of Aromatic Sulfides." J.Am.Chem.Soc.120. 12728-12733 (1998)