1997 Fiscal Year Annual Research Report
ルテニウム触媒を用いるアルキンの二量化ヒドロシリル化の開発
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09750960
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
川波 由紀夫 山口東京理科大学, 基礎工学部, 助手 (50289302)
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Keywords | ヒドロシリル化 / アルキン / 二量化 / ルテニウム / カルベン / 位置選択性 / 均一系錯体触媒 |
Research Abstract |
筆者らが既に報告している、パラジウム錯体触媒での、1-アルキンの二量化-ヒドロシリル化によるシリルブタジエン誘導体生成に代表されるように、基本的なヒドロシリル化の触媒サイクルの中に別の素反応を組み込むことで、ヒドロシリル化関連の新規な反応の開発が可能である。 本研究課題では、触媒中間体としてカルベン錯体を含むような、アルキンの二量化-ヒドロシリル化の開発を提案している。すなわち、近年注目されているアルケンおよびアルキンのメタセシスの触媒中間体とされているのが、金属カルベンである。その特徴的な炭素-炭素結合生成能力とヒドロシリル化の組み合わせは、特異な反応性や位置選択性を示すものと期待される。 そのような触媒前駆体としてルテニウム錯体を選び、反応を試みた。条件検討の結果、ペンタメチルシクロペンタジエニル基といったかさ高い配位子を持つルテニウム錯体を触媒前駆体とし、ヒドロシランと1-アルキンとの反応を行った場合、ヒドロシランの種類によって反応性が全く異なることを見いだした。 (1)ヒドロシランとしてクロロシラン類を用いると、通常の1-シリル-1-アルケンでなく、2-シリル-1-アルケンを与える、新規な位置選択性でヒドロシリル化が進行した。 (2)一方、トリアルキルシラン類ではアルキンの単純二量化が併行して起こった。 筆者らは、他のヒドロシリル化関連反応でヒドロシランの構造が反応の経路に大きく影響することを報告しており、この反応でも、同様の現象が明確に示された。 本課題での目標である、炭素-炭素結合生成を含むヒドロシリル化反応の開発にはいまだ至ってはいないものの、2-シリル-1-アルケンを与えるこの新規な位置選択性は、特殊な系での結果も含めてこれまでに2例程度の報告しかなく、反応機構的に非常に興味深い。従って、生成するアルケニルシランの有機合成的利用の可能性も含めて、展開の余地の充分ある反応を見いだしたといえる。 平成10年度は、さらなる触媒前駆体の探索を進めると共に、上記の新規な位置選択性のヒドロシリル化をも引き続き検討する予定である。
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