1998 Fiscal Year Annual Research Report
紫外線吸収剤を用いたリビングラジカル重合をベースとする高分子設計
Project/Area Number |
09750975
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 絵里 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (60263175)
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Keywords | ヘアピン型ポリマー / TEMPO / リビングラジカル重合 / スチレン / 対ラジカル / tert-ブトキシスチレン / ビラジカル化合物 |
Research Abstract |
本年度は、紫外線吸収剤の1つである2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)によるリビングラジカル重合法を用いて、生体内で二分子膜を形成する脂質のモデル化合物として重要なヘアピン型ポリマーの合成について研究を行った。芳香環のortho位に2分子のTEMPOを有するビラジカル化合物(1)を合成し、これを対ラジカルとするラジカル重合からヘアピン型の・ポリマーを合成した。1の存在下、過酸化ベンゾイルを開始剤とするスチレンの重合では、GPCで二峰性を示す分子量分布の広いポリマーが生成した。一方、開始剤無添加の系では、分子量分布1.41の比較的分子量分布の狭いポリマーが得られた。このポリマーを、1の異性体である芳香環のpara位にTEMPOを有する化合物2、および芳香環上に1分子のTEMPOしか持たない化合物3を用いた重合で得られたポリマーと比較した。その結果、1および2を用いて得られたポリマーの分子量は、3を用いた場合のそれに比べて大きいことがわかった。このことは、1および2による重合では、分子内のTEMPOは2分子とも重合に関与しており、1の重合で得られたポリマーがヘアピン構造に近いことを示唆している。また、いずれの重合においても生成ポリマーの分子量は転化率の増加にともなって直線的に増加したことから、重合がリビング的に進行したことがわかった。さらに、1で得られたポリスチレンを開始剤として、水素結合によって分子内主鎖間のより強固な相互作用が期待されるビニルフェノールユニットへの変換が可能なp-tert-ブトキシスチレンの重合を125℃で行った。その結果、スチレンとp-tert-ブトキシスチレンのブロック共重合体が効率よく得られた。生成したブロック共重合体は酸触媒によって、容易にビニルフェノールユニットへ変換されることがわかった。
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[Publications] 竹田邦彦: "ニトロキシルラジカルを用いたリビングラジカル重合法によるヘアピン型ポリマーの合成" Polymer Preprints,Japan. 47(2). 146 (1998)
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[Publications] 吉田絵里: "TEMPOを用いたリビングラジカル重合法による精密高分子合成-ヘアピン型ポリマーの合成" Polymer Proprints,Japan. 47(2). 1281-1282 (1998)