1997 Fiscal Year Annual Research Report
ポリアミノ酸誘導体を用いた不斉反応場の構築と不斉光増感反応への応用
Project/Area Number |
09750976
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和田 健彦 大阪大学, 工学部, 助教授 (20220957)
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Keywords | 光化学 / 不斉合成 / エナンチオ区別 / 光増感反応 / α-へリックス / セリン |
Research Abstract |
平成9年度は1.光学活性増感剤を有するポリアミノ酸の合成ならびにシクロオクテンに対する増感機能の検討および2.増感剤を導入したアミノ酸の伸長反応ならびにその溶液構造について検討した。 ・光学活性増感剤を有するポリアミノ酸の合成ならびに(Z)-シクロオクテンに対する増感機能の検討 アミノ酸として側鎖に水酸基を有するL-セリンを用い、ベンゼンポリカルボン酸をシクロオクテンに対する増感剤として酸クロライド法によりエステル化し側鎖に導入した。ベンゼンポリカルボン酸としてはカルボキシル基が1つのベンゾエ-ト、2つのフタレート、4つのピロメリテートを用いた。得られた各アミノ酸誘導体を用いて254nm光照射による(Z)-シクロオクテンのエナンチオ区別異性化反応について検討した結果、良好な収率で異性化反応が進行することが確認できた。 ベンゼンポリカルボン酸への導入結合の増感能におよぼす影響について検討するため、先と同様セリンを用い、アミド結合によりN末に導入したベンゼンポリカルボン酸アミド類も同様に合成し、光増感異性化反応について検討した。ベンゼンポリカルボン酸アミドを増感剤とする場合は、エステル類に比較して約一桁程度低いE/Z比でしか反応は進行せず、アミド類の増感能は低いことが確認できた。これは分子内での水素結合形成による電子的なファクターと、構造固定による立体的なファクターに基づくことを明らかとした。 ・増感剤を導入したアミノ酸の伸長反応ならびにその溶液構造の検討 先に合成したエステル結合によりセリンに増感剤を導入したアミノ酸を核として、N末ならびにC末からアラニン(Ala)ならびにα-アミノイソブチル酸(Aib)を固相合成法を用いて伸長反応を行うことにより3種の増感剤を導入したセリン誘導体を含む15量体を合成した。 各オリゴマーの基底状態構造をUV、CDならびにNMRも用いて検討し、さらに増感剤の励起状態物性と基質との分子間相互作用を蛍光ならびに蛍光寿命を測定した。その結果溶液中でα-へリックス構造を持ち、モノマーに比較して励起状態が安定化されていることが明らかとなった。
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[Publications] T.Wada, N.Minaminoto, Y.Inaki, and Y.Inoue: "Specific Interaction between 5′-Aminonucleosides and Borates and Influence of Borates on Nucleoside Conformations" Nucleic Acids Res.37. 9-10 (1997)
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[Publications] Y.Liu, Y.Zhang, A.Qi, R.Chen, K.Yamamoto, T.Wada, and Y.Inoue: "Molecular Recognition Study on a Supramolecular System.10.Inclusion Complexation of Modified β-Cyclodextrines with Amino Acids" J.Org.Chem. 62. 1826-1830 (1997)
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[Publications] Y.Inaki and T.Wada: "Photodimerizations and crystal structures of thymine derivatives having a long alkyl chain connected with a carbamate bond" New Macromolecular Science. 1. 79-88 (1997)
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[Publications] T.Sugiki, N.Tohnai, Y.Wang, T.Wada, and Y.Inaki: "Photodimerizations and crystal structures of thymine derivatives having a long alkyl chain connected with a carbamate bond" Bull.Chem.Soc.Jpn.69. 1777-1786 (1997)
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[Publications] Y.Inoue and T.Wada: "Molecular recognition in Chemistry and Biology as Viewed from Enthalpy-Entropy Compensation Effect" Adv.Supramolecular Chem.4. 55-96 (1997)
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[Publications] 井上佳久, 和田健彦(分担執筆): "″分子認識のしくみ,″「分子認識化学」築部浩編" 三共出版, 約400 (1997)