1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09750982
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上殿 明良 筑波大学, 物質工学系, 講師 (20213374)
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Keywords | 陽電子 / 高分子 |
Research Abstract |
高分子に入射した陽電子は0.1nm^3のオーダーのサイズの空隙中で,ポジトロニウム(Ps:陽電子と電子の水素様ペア)の状態から消滅する場合がある。Psの寿命は空隙のサイズに対応し,その形成率は空隙の濃度や空隙周辺の分子運動に影響を受ける可能性がある。一方,高分子のガラス転移や緩和現象は空隙と密接な関連がある。本研究では,高分子中のPsの振る舞いと,分子の緩和現象との関連を詳細に調べた。 高時間分解能の陽電子寿命測定装置及びドップラー拡がり測定装置を開発した。これらの装置を用いて,ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリスチレン(PS)等の陽電子寿命及び消滅γ線ドップラー拡がりを試料温度の関数として測定した。また,得られた結果とDSC,力学緩和,誘電緩和のデータの比較検討を行った。ガラス転移温度T_g以下では,試料温度上昇に従い,Psの寿命は線形に増大した。これは熱膨張に対応する分子運動により空隙サイズが増大したことに対応する。T_g以上では,Psの寿命は非線形に増大した。これはガラス転移に対応する主鎖セグメントのミクロブラウン運動による空隙サイズの増大をPsが検出しているためである。PEでは,Psの消滅強度の温度依存性は,力学緩和及び誘電緩和で観測される。α,β,γ吸収に対応することがわかった。以上より,Psの形成過程には緩和現象に対応する分子運動が密接に関連していることが明かとなった。
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[Publications] A.Uedono: "Transition and Relaxation Processes of Polyethylene,Polypropylene,and Polystyrene Studied by Positron Annihilation" J.Polym.Sci.B. 35・10. 1601-1609 (1997)
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[Publications] Y.Kameyama: "Environmentally Stable Chemically Amplified Resist" Proc.of Int.Conf.of International Society for Optical Engineering,. 3049. 238-247 (1997)