1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09760005
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂本 亘 岡山大学, 資源生物科学研究所, 助手 (20222002)
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Keywords | 細胞質遺伝 / 母性遺伝 / オオムギ / ミトコンドリア |
Research Abstract |
本研究では、細胞質遺伝、特にミトコンドリアの遺伝を制御する新たな遺伝子を同定し、これらの解析をすすめると同時に、分子育種に応用するための知見を得ることを目的とし、今年度は以下の研究を行った。(1)オオムギ葉緑素変異系統wst-3(オキナ麦)の遺伝解析 オオムギでは葉及び穂に縞模様の形質を引き起こすオキナ麦という変異が知られており、遺伝解析のテスターとしても使われている。また、この系統では、「縞」形質の他に、一定の比率でアルビノを分離し、かつ母性遺伝することが示されている。今年度は、岡山大学資源生物科学研究所大麦・野生植物資源研究センターより分譲を受けたオキナ麦と由来を共にすると思われる系統wst-3について、アルビノの出現頻度を調べたところ約13%であって、今井(1928)の報告と同様であることがわかった。さらに、このアノビノ形質が母性遺伝するかどうかについて調べるため在来大麦の親品種である「赤神力」と正逆交雑を行いF1種子を採取した。また、次年度以降の解析に用いるための材料の増殖を行った。(2)ミトコンドリアタンパク質をコードする遺伝子の解析 ミトコンドリアを構成するタンパク質は、ミトコンドリアゲノム内の遺伝子にコードされている以外のものは、すべて核の遺伝子にコードされており、細胞質内で合成されてミトコンドリアへ輸送される。ミトコンドリアゲノムにコードされている遺伝子はごく僅かであり、構成タンパク質の殆どが核遺伝子によって発現される。ミトコンドリア機能の維持には、通常、呼吸鎖などのタンパク質複合体を構成するタンパク質の他に、その複合体形成などに関与する遺伝子があると考えられているが、植物では、あまり研究されていない。そこで本研究では、これらミトコンドリアを構成するタンパク質の遺伝子を単離して解析するために、シロイヌナズナからESTクローンのホモロジー検索に基づいてF1-ATPase複合体のgamma,dekta,delta-prime,epsilonの4つのサブユニットをコードする遺伝子を得て、これらの塩基配列ならびに遺伝子の1次構造について解析した。制御遺伝子については、酵母の呼吸欠損突然変異体abc1,oxalをシロイヌナズナ由来のcDNAライブラリーによって相補し、植物のホモログであるAtABCl及びAtOXAlを単離することができた。
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