1997 Fiscal Year Annual Research Report
分子細胞学的手法によるオオムギ野生種の系統分化の解析
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09760006
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
武田 真 岡山大学, 資源生物科学研究所, 助手 (40216891)
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Keywords | オオムギ / 染色体 / リボゾーム遺伝子 / 進化 / 系統分化 / FISH |
Research Abstract |
オオムギ属の系統分化の過程を明らかにすることを目的として,今年度は二倍体19種について2種類のリボソーム遺伝子(5Sおよび18S-5.8S-25S;18S-25Sと略称)の染色体上での位置を蛍光in situハイブリダイゼーションによって調査した. 栽培オオムギ(H.vulgare)の祖先種と推定されるH.vulgare ssp.spontaneumは3対の5SrDNAと6対の18S-25SrDNAを持ち,栽培オオムギと類似のrDNA構成を持つことがわかった.しかし,同じくIゲノムを持ちH.vulgareに近縁とされるH.bulbosumは5SrDNAと18S-25SrDNAを一対ずつ別々の染色体上に持ち,H.vulgareとはrDNA構成が著しく異なっていた. Xゲノムを持つH.marinumは5SrDNAを2対と18S-25SrDNAを1対持ち,5SrDNAの1対は18S-25SrDNAよりも末端側に位置していた.Yゲノムを持つH.murinumは5SrDNAを1対と18S-25SrDNAを2対持ち,5SrDNAは18S-25SrDNAよりも染色体基部側に位置していた.これらのことは,XゲノムとYゲノムが異なるゲノムであることを支持する。 Hゲノムを持つ野生種はアジアおよび南北アメリカ大陸に分布しているが,分布地間でrDNA構成および変異の程度に差が見られた.すなわち,調査したアジアと北アメリカの6種ではrDNAの構成に多様な種間変異が見られたのに対して,南アメリカ大陸の9種では単一のパターンしか見出されなかった.南アメリカ大陸の野生オオムギでrDNAの変異が小さい原因としては,野生オオムギが南アメリカ大陸に伝播する際に創始者原理が働いたためと考えられる. 以上のように,rDNA構成にはオオムギ属の種間で多様な変異が認められ,系統分化を解明するための有用な染色体マーカーとなることが明らかになった.
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