1998 Fiscal Year Annual Research Report
分子細胞学的手法によるオオムギ野性種の系統分化の解析
Project/Area Number |
09760006
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
武田 真 岡山大学, 資源生物科学研究所, 助手 (40216891)
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Keywords | オオムギ / 野性種 / ゲノム / 染色体 / リボソームRNA遺伝子 / 物理マッピング |
Research Abstract |
今年度はオオムギ属倍数種(四倍種および六倍種)について二種類のリポソームRNA遺伝子、5Sおよび18S-25SrDNAの物理マッピングを行い、オオムギ属倍数種の系統進化の解明を試みた。rDNAのパターンから以下のことが結論される。(1)栽培オオムギと同じゲノムを持つとされるH.bulbosumの四倍体は同質四倍体である。(2)Yゲノムを持つH.murinumの六倍体は四倍体と二倍体のサイトタイプの交雑によって成立したと考えられる。 (3)Xゲノムを持つH.marinumの四倍体は単純な同質四倍体ではなく、部分異質四倍体である。(4)四倍種のH.capense,H.secalinumおよび六倍種のH.brachyantherum6xにはXゲノムが含まれる。(5)北アメリカ大陸に分布するH.jubatumは5対の染色体にrDNAのシグナルを持ち、アジア大陸のH.roshevitziiとH.brachyantherum2xの交雑によって成立したと推定される。また、中央アメリカに分布するH.guatemalenseおよび南アメリカ大陸に分布するH.fuegianumはH.jubatumに近縁と考えられる。(6)北アメリカ大陸に分布するH.depressumは4対の染色体にだけrDNAシグナルを持ち、二倍種のH.intercedensとH.pusillumの交雑から起源したと推定される。(7)北アメリカ大陸の六倍種であるH.arizonicumはH.jubatulmとH.pusillumの交雑に由来すると推定される。 従来オオムギ属は二倍体に見出される,H,I,XおよびYの4基本ゲノムに対応する4グループに分類されていた。しかし、本研究から、HゲノムとXゲノムを併せ持つ第5のグループが存在することが実証された。さらに、これまで推定困難であった倍数種の祖先種についてもかなり明確に推定することができた。これらのことから、rDNAはオオムギ属の系統進化を解明するのに有用な染色体マーカーであると結論される。
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[Publications] Takate,S. et al.: "Comparative physical mapping of the 5S and 18S-25SrDNA in rine wild Hordeum species and cytotypes" Theoretical and Applied Genetics. 98 (1). 1-9 (1999)
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[Publications] 安藤裕崇,武田 真ら: "オオムギ属二倍体野性種における5Sおよび18S-25SrDNAの比較マッピング" 育種学雑誌. 48(別2). 340 (1998)
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[Publications] 武田 真ら: "二倍体野性オオムギ5種における縦列型反復配列αp Ta1およびpSc119.2の染色体上での分布様式" 育種学雑誌. 48(別1). 262 (1998)