1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09760016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松井 勤 京都大学, 農学部, 助手 (70238939)
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Keywords | 葯の裂開 / 花粉の膨張 / 引き金 / 物理的刺激 |
Research Abstract |
1.稲科作物の開花時における葯の裂開の引き金を明らかにする目的で、閉花受粉する二条大麦(西海皮24号)を材料として、様々な刺激が葯の裂開に及ぼす影響を調査した。穎花の外頴を人為的に除去した場合には葯の裂開が誘発された。しかし、頴花の先端を切除した場合には葯の裂開は誘発されなかった。このことから、開頴による葯の裂開の誘発は、頴花内のガス環境の変化や頴への刺激によるものではない。開頴せずに雌芯に針を貫入させると葯の裂開が誘発された。雌芯への針の貫入は、水中においても葯の裂開を誘発した。また、針の貫入跡を直ちにワセリンで寒いだ場合にも誘発した。これらのことから、雌芯への針の貫入は、水ストレスやガス環境の変化ではなく、物理的な刺激により、葯の裂開を誘発するものと結論された。 2.水稲の開花直前の頴花を採取し、異なる湿度条件下で外頴を除去し、湿度環境の違いが葯の裂開に及ぼす影響を調査した。その結果、乾燥条件が葯の裂開を阻害することがわかった。従来、乾燥による葯壁の反り返りが葯裂開の起動力であると考えられてきたが、この定説では本実験の結果を説明することができず、乾燥による葯壁の反り返りは葯の裂開の起動力ではない。 3.葯の裂開過程における花粉の膨張の働きを明確にするために、開花前日の葯を輪切りにし、一部の小片からは花粉を取り出し、他の小片はそのままで、水に浸漬した。その結果、花粉を持つ小片ではセプタムの裂開が認められたが、花粉を取り除いた小片では認められなかった。この結果から、花粉の膨張がセプタムの崩壊の起動力である。 4.以上の結果から、稲科作物では開頴は頴花内のガス環境の変化や頴花への刺激ではなく、鱗被の膨張等、雌芯への物理的な刺激により葯の裂開を誘発するものと推察された。また、葯の裂開の起動力は、葯壁の乾燥ではなく、花粉の膨張であることが確認された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Tsutomu Matsui et al.: "Effects of higt temperature and CO2 concentration on spikelet sterility in indica rice" Field Crops Research. 51. 213-219 (1997)
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[Publications] Tsutomu Matsui et al.: "Higt temperature-induced spikeliet sterility of japonica rice at flowering in relation to air temperature, humidity and wind velocity conditions" Japanese Journal of Crop Science. 66. 449-455 (1997)