1998 Fiscal Year Annual Research Report
植物組織培養苗の生育生理特性に及ぼす培養器内環境の影響
Project/Area Number |
09760032
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
金地 通生 神戸大学, 農学部, 助教授 (90211854)
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Keywords | 植物組織培養 / カリフラワー / 光合成 / 光独立栄養生長 / 順化 / クロロフィル / CO_2濃度 |
Research Abstract |
組織培養小植物の鉢上げ後の順化効率を高めることを目的とし,カリフラワー(Brassica oleracea L)の無菌発芽実生の茎頂より育成した培養小植物をモデル系として用い,その光合成に及ぼす培養環境の影響として,今年度は特に光強度を調査し,さらに培地ショ糖濃度,培養容器内のCO_2濃度,光強度の3要因について相互作用を解析した。 密閉培養した小植物を鉢上げ1週間前に通気条件にし,高光強度下(55→100μmol・m^<-2>・s^<-1>)に置くことで,密閉条件下でみられた光障害に対する感受性を低下させ,光合成速度および生長量の増加につながって光独立栄養生長が促進することが示唆された。 培養小植物の光合成に関して,培地ショ糖,CO_2濃度,光強度の3要因の相互作用についてみると,CO_2とショ糖で交互作用がみられ,有糖培地ではCO_2濃度の増加が光合成速度に抑制的であり,無糖培地では促進的であったことから,有糖培地で必要以上(大気CO_2濃度)のCO_2施肥はかえって光合成能力の発達を抑制すると推察された。小植物のクロロフィル含量と光合成速度の間には正の相関がみられた.高光強度下でCO_2施肥した有糖培地の小植物は,ショ糖およびデンプン含量が極めて高く,光合成速度は低下した。これは,光合成によりショ糖,デンプンを合成すると同時に,培地に添加したショ糖の吸収も行ない,葉内に過剰に蓄積したデンプン粒が葉緑体に損傷を与えて明反応系の働きを阻害したのに加え,培地ショ糖がCO_2初期固定酵素であるリブロースニリン酸力ルボキシラーゼ活性を低下させたことに因ると推察された。 本研究から,発根後の培養小植物は無糖培地に移し,鉢上げに際して比較的短期間(約1週間)のin vitro環境制御(高光強度下で通気条件)を行うことにより,小植物の光合成能力が発達して生長が促進され,鉢上げ後の活着,順化が容易となり,枯死や生育遅延の問題が軽減されることが示された。このような光合成能力の発達は,光合成機能に関連した葉内成分(主にクロロフィル)の含量増加に起因した培養小植物の光独立栄養生長の増進が鉢上げ後の順化の促進につながることが明らかとなった。
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[Publications] Michio Kanechi: "The effects of carbon dioxide enrichment,natural ventilation,and light intensity on growth,photosynthesis,and transpiration of cauliflower plantlets cultured in vitro photoautotrophically and photomixotrophically" Journal of the American Society for Horticultural Science. 123・2. 176-181 (1998)