1997 Fiscal Year Annual Research Report
タカサゴユリとテッポウユリの種分化の分子進化学および生理学的検証
Project/Area Number |
09760036
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
比良松 道一 九州大学, 農学部, 助手 (30264104)
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Keywords | 種分化 / タカサゴユリ / テッポウユリ / 遺伝的分化 / 生態的分化 / 園芸資源 |
Research Abstract |
本研究は、テッポウユリとタカサゴユリの野生集団を材料として遺伝的多様性や生態を比較し、両種の分化のプロセスを検証する事を目的として行われた。 野生集団の自生地の探索および研究材料の収集を、屋久島、奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島、台湾において行ったところ、テッポウユリは隆起石灰岩で構成される海岸線に多く分布し、内陸部では高くともせいぜい標高300m位までしか分布していなかった。一方、タカサゴユリは台湾内陸部の平地から標高3000mにわたる広い垂直分布を示し、テッポウユリと分布域が重なる地域は見つからなかった。また、開花期はテッポウユリで3月下旬(分布域南部)から5月下旬(分布域北部)であるのに対し、タカサゴユリでは5月(低地)から8月(高地)であり、分布域が接近する台湾において開花期が重ならないことがわかった。さらに、テッポウユリとタカサゴユリとのあいだで人工授粉を行ったところ、テッポウユリを種子親とした場合には全く結実せず、またタカサゴユリを種子親とした場合でも結実はするが、未熟種子や無胚種子の割合が多くなった。以上のことから、両種の間には、完全な季節的隔離とある程度の地理的隔離、生殖的隔離が働いており、それらが種分化に大きく影響したと思われた。 収集した材料を用いた酵素多型の調査では、テッポウユリの種内でアロザイムの頻度に地理的な偏りがみられ、流球列島から台湾にかけての地質変動の歴史を反映しているものと考えられた。また、タカサゴユリのアロザイム変異は台湾のテッポウユリのそれと類似しており、両者は遺伝的に近いと考えられた。
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Research Products
(1 results)