1997 Fiscal Year Annual Research Report
バキュロウィルス全遺伝子の組織的機能解析とミニゲノム発現ベクターの開発
Project/Area Number |
09760050
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
姜 媛瓊 理化学研究所, 分子昆虫学研究室, 基礎科学特別研究員 (30291917)
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Keywords | バキュロウィルス / シャトルベクター / ゲノム / トランスポゾン / カテプシン / キチナーゼ |
Research Abstract |
本研究では、バキュロウィルスの全遺伝子の機能を組織的に解析することを目的とする。今年度は計画に従い、まず酵母のYAC(YeastArtificialChromosome)ベクターにカイコ核多角体病ウィルス(BmNPV)の全ゲノムを導入して、酵母中で全ウィルスゲノムを維持できるシャトルベクターの作成を試みた。そのために、まず短いウィルスDNA断片をYACベクターに入れたトランスファーベクターを作成し、このベクターとウィルスゲノムDNAを酵母に同時に導入した。得られたポジティブクローンからDNAを抽出し、PCRおよびサザンなどにより、ウィルスゲノムがYACを持ち、酵母中で維持されていることを確認した。次に、このようにして作成したウィルスゲノムが本来の宿主である昆虫細胞で増殖できることを確かめた。現在、酵母中でユビキチン遺伝子を破壊した組み換えウィルスを作成し、機能解析を行っている。また、これまでに分子生物学的に解析されていないコドリンガ顆粒病ウィルス(CpGV)の遺伝子解析を行った。クローン化した3.2kbのDNA断片に大腸菌のトランスポゾンを挿入し、塩基配列を決定したところ、この断片上には3つのORFが存在していることがわかった。相同性の検索から、二つのORFはキチナーゼとカテプシンの遺伝子であると考えられた。この二つの遺伝子産物は宿主の体を分解することでウィルスの伝播に重要な役割を果たしていると考えられている。そこで、CpGVのカテプシンの機能を調べるために、BmNPVのカテプシン遺伝子欠損株にCpGVのカテプシン遺伝子を導入するレスキュー実験を行った。その結果、欠損株を感染させた幼虫は死後、体が分解されなかったが、GVのカテプシンを導入した欠損株を感染した幼虫は分解され、CpGVカテプシンは活性を持つことが明らかになった。現在、これらの結果をまとめた論文を投稿中である。
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