1997 Fiscal Year Annual Research Report
有用細菌の根圏定着に及ぼす土壌集積カルシウムの影響と細胞内Ca^<2+>濃度の調節機構
Project/Area Number |
09760060
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
境 雅夫 九州大学, 農学部, 助手 (20225775)
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Keywords | カルシウム / 蛍光性シユ-ドモナス / 塩類集積土壌 / aequorin / Psedomonas putida |
Research Abstract |
カルシウム集積土壌で有用根圏細菌である蛍光性シユ-ドモナスの接種効果を十分に発揮させるためには、Ca^<2+>耐性菌株を用いる必要のあることが、これまでの研究で示唆された。さらに、Ca^<2+>耐性機構として、細胞内Ca^<2+>濃度を能動的に調節するCa^<2+>-ATPase遺伝子を解析した結果、Ca^<2+>-ATPaseはCa^<2+>耐性の主要な機構ではないと推定された。しかし、真核生物ではCa^<2+>-ATPaseが細胞内Ca^<2+>濃度を調節して細胞の諸機能に重要な役割を果たすことが明らかにされており、蛍光性シユ-ドモナスにおけるCa^<2+>-ATPaseの役割も検討する必要があると判断された。 細菌の細胞内Ca^<2+>濃度と細胞機能との関係については、まだわずかな知見しかないが、大腸菌において細胞分裂や走化性に影響することが示唆されている。本研究では、蛍光性シユ-ドモナスのCa^<2+>-ATPaseが細胞分裂や走化性に関与しているかどうかをCa^<2+>-ATPase欠損変異株を用いて調べた。 まず、培養時の細胞形態の経時的な変化および増殖過程を変異株と野生株とで比較した。その結果、顕微鏡観察では、両菌株の細胞形態には差が認められなかった。一方、増殖においては、培養20時間目の増殖量には差が認められなかったが、5時間目では変異株の増殖量は野生株の約50%しかなく、変異株の対数増殖期の開始は、野生株に比ベ2時間程度遅れることが示された。したがって、Ca^<2+>-ATPaseは対数増殖期の開始、即ち細胞分裂に関与している可能性が示唆された。 次に、swarm plate法およびキャピラリー法を用いて変異株と野生株の走化性を比較した。その結果、変異株の走化性は、野生株に比べ著しく低下していることが示された。運動性に関しては両菌株に差がないことから、Ca^<2+>-ATPaseは蛍光性シユ-ドモナスの走化性の発現に大きく関与していることが推定された。
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