1997 Fiscal Year Annual Research Report
アスコルビン酸の葉緑体への集積機構とその遺伝子工学的増強
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09760061
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
尼子 克己 大阪府立大学, 農学部, 助手 (90275280)
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Keywords | アスコルビン酸 / 輸送 / 葉緑体 |
Research Abstract |
ホウレンソウ無傷葉緑体に光照射すると、デヒドロアスコルビン酸(DNA)を緩衝液に加えたときにのみ見られる酸素発生を検出できた。酸素発生速度は、葉緑体懸濁液のpH、光強度、DHA濃度、およびDHAとのインキュベーション時間に依存した。光照射中にDHAを添加しても酸素発生の上昇は見られなかった。また、ヒトグルコーストランスポーター(GLUT1)のDHA輸送阻害剤であるサイトカラシンBはDHA依存の葉緑体酸素発生も阻害した。一方、DHAを添加したときの葉緑体中のアスコルビン酸(AsA)およびDHA量を電気化学的に測定したところ、DHA添加区で総アスコルビン酸量(AsA+DHA)が上昇し、これは塩化アンモニウム(NH_4Cl)添加によって抑制された。葉緑体中のDHA濃度は緩衝液のそれより高く見積もられた。AsA/DHA比は光照射によって上昇したが、その程度はDHA、NH_4Clに影響されなかった。以上の結果は、(1)葉緑体へのAsAの集積はDHAに特異的なトランスポーターによるDHAの取り込みと、光合成電子伝達によるAsAへの還元によって起こること、(2)DHAトランスポーターはDHAを能動輸送するが光照射中はゲートが閉じられることを示しており、ヒト培養細胞などと同様の輸送-還元の二段階ではあるが分子的性質の異なる輸送体によって葉緑体へAsAを蓄積出来ることが明らかになった。一方、葉緑体DHA還元酵素の精製を試みたが、単離葉緑体で見られた基質親和性の高い活性成分の単離には至らなかった。
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