1997 Fiscal Year Annual Research Report
酵母グリオキサラーゼI遺伝子の分子進化とストレス応答機構の解析
Project/Area Number |
09760084
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 喜晴 京都大学, 食糧科学研究所, 助教授 (70203263)
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Keywords | Saccharomyces cerevisiae / グリオキサラーゼI / ストレス / MAPキナーゼ / 浸透圧 / two-component system |
Research Abstract |
S.cerevisiaeのグリオキサラーゼI遺伝子(GL01)のプロモーター領域には、STRE(stress response element:5'-AGGGG-3')と呼ばれるcis-配列が存在した。STREは種々のストレス応答性遺伝子のプロモーター領域に見いだされている。STRE配列を持つ遺伝子は、熱、活性酸素、高浸透圧、エタノール、低pHなど様々な環境ストレスに応答して発現誘導されることが知られていることから、種々のストレスによるGL01遺伝子の発現レベルを解析した。その結果、GL01遺伝子の発現は浸透圧ストレスによってのみ特異的に誘導され、その他のストレスによっては全く誘導されなかった。S.cerevisiaeはHOG(high osmolarity glycerol)と呼ばれる浸透圧ストレスに応答するMAP(mitogen-activated protein)キナーゼカスケードを持つ。Hoglpの下流には、Msn2pとMsn4pという2つのzinc-fingerタイプの転写因子が存在すると考えられている。そこでGL01遺伝子の浸透圧ストレスに応答した発現誘導がHOG-MAPキナーゼ系によって制御されているかどうかを、各種遺伝子破壊株を用いて検討した。その結果、hog1△破壊株ではGL01遺伝子の浸透圧ストレス応答は完全に抑圧された。msn2△、あるいはmsn4△単独破壊株ではそれぞれ80%、50%抑圧されたのに対し、msn2△/msn4△二重破壊株では完全に抑圧された。従って、GL01遺伝子の発現はHOG-MAPキナーゼカスケードによってシグナル伝達され、Msn2pとMsn4pとによって協調的に転写制御されることが明らかになった。
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