1997 Fiscal Year Annual Research Report
酵母細胞の老化に伴う酸化的ストレス適応応答の変動機構の解析
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09760086
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井沢 真吾 京都大学, 食糧科学研究所, 助手 (10273517)
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Keywords | Saccharomyces cerevisiae / glutathione reductase / glucose-6-phosphate dehydrogenase / glutathione |
Research Abstract |
酵母Saccharomyces cerevisiae酸化的ストレス(過酸化水素ストレス)適応機構におけるグルタチオン再還元系の役割について検討を行った。グルタチオン再還元に関与する、glutathione reductase(GR)およびNADPH合成系酵素であるglucose-6-phosphate dehydrogenase(G6PDH)と6-phosphate dehydrogenase(6PGDH)の遺伝子破壊株を構築し、その解析を行った。全ての欠損株について、グルタチオン再還元の不全が観察された。全グルタチオン含量に対する酸化型グルタチオンの比率は、野生株が約3%なのに対し、GR欠損株では10%、G6PDH/6PGDH欠損株では6%と酸化型の比率の上昇が観察された。しかしながら還元型グルタチオンの含量は各株とも充分量保持していた。GR欠損株は酸化型グルタチオンの量、比率ともにもっとも高い値を示すにもかかわらず、野生株と同等の感受性を示し、adaptationの誘導も観察された。いっぽう、G6PDH/6PDGH欠損株はGR欠損株に比べ酸化型の比率が低いにもかかわらず、過酸化水素に対しもっとも感受性が高く、adaptationの誘導も観察されなかった。これまでヒト赤血球等のG6PDH欠損症の酸化的ストレス高感受性の原因は再還元系の不全による還元型グルタチオンの減少に由来すると考えられてきた。しかし、少なくとも酵母細胞については、今回得られた研究成果からは、G6PDH欠損による酸化的ストレス高感受性の原因は還元型グルタチオンの減少や再還元系の不全のみに由来するのではなく、そのほかの要因が大きく影響し得ることを示した。また、酸化的ストレスへの適応機構のなかでG6PDH等のNADPH合成系が重要な役割を担うことを明らかにした(Biochem.J.,330,811-817,1998)。更に、老化細胞と若い細胞間でのグルタチオン再還元能の違いを検討した。
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[Publications] S.Izawa et al.: "Importance of glucose-6-phosphate dehydrogenase in the adaptive response to hydrogen peroxide in Saccharomyces cererisiae" Biochem.J. 330(2). 811-817 (1998)
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[Publications] 井沢真吾・木村光: "酵母の各種遺伝子破壊株を用いた酸化的ストレス応答の研究" 京都大学食糧科学研究所報告. 60. 131-132 (1997)