1997 Fiscal Year Annual Research Report
天然多糖の有効利用に基づく抗腫瘍活性アセトゲニン類の合成化学研究
Project/Area Number |
09760119
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 俊哉 理化学研究所, 有機合成化学研究室, 研究員 (00202151)
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Keywords | アセトゲニン / キチン / ムコシン / アシミロビン / 抗腫瘍活性 / キレーションコントロール / 転位-環拡大反応 |
Research Abstract |
本研究では、天然多糖から容易に調製可能な2,5-アンヒドロ-D-マンニトール(1)を鍵出発物として用いることにより抗腫瘍活性・殺虫活性などの顕著な生物活性を持ったアセトゲニン類を立体選択的に合成することを目的としている。特に、強力な抗腫瘍活性を示すことから近年注目を集めているムコシン(2)並びに、アシミロビン(3)をそのターゲットとして取り上げた。 まず、キトサンあるいは、その構成単糖であるグルコサミンを亜硝酸処理の後、水素化ホウ素ナトリウム還元、引き続くアセチル化反応に供し、得られたテトラアセチル体をメタノリシスに付すと、1を結晶で単離することができた。これまで、1の反応性についてはほとんど調べられていなかったので、まず各種水酸基の位置選択的保護、並びにデオキシ化反応から検討を開始した。次いで、ここでの知見を基にして、二つの2級水酸基と片側の1級水酸基が保護されたテトラヒドロフルフラール誘導体を合成し、その末端炭素からの立体選択的炭素鎖延長反応について種々検討した。その結果、二つの2級水酸基がt-ブチルジメチルシリル基で保護された基質に対して、塩化亜鉛の存在下にグリニャ-ル試薬と反応させた場合のみ、高選択的にα-キレーションモードで炭素鎖延長が進むことを見出した。なお、他の保護基やデオキシ体の場合、あるいはリチウムやセリウム試薬との反応では、低選択性にとどまった。この反応を利用して、2,3のテトラヒドロフラン隣接不斉中心を立体選択的に構築することに成功した。一方、ノンキレーションモードで炭素鎖の導入されたクラム型の生成物が合成できれば、環拡大反応によって2の構造的特徴であるテトロヒドロピラン骨格が立体選択的に合成できる。このクラム型の生成物を得るためには、傘高いトリアルキルアルミニウムの存在下、グリニャ-ル試薬が効果的であることも分かった。
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