1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09760131
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 延行 京都大学, 食糧科学研究所, 助手 (20252520)
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Keywords | オボアルブミン / 熱安定性 / セリンプロテイナーゼインヒビター(serpin) |
Research Abstract |
鶏卵の貯蔵中に、卵白の食品機能特性が低下する原因の一つに、主成分であるovalbumin(OVA)が熱安定性の高い分子種、S-OVAに変化することが上げられている。本研究では、その分子機構を明らかにし、タンパク質全般の熱安定化原理の究明に資することを目指し、S-OVA分子の構造特性を見い出すことを目的とした。 1) S-OVA単結晶のX線回折実験 従来法(OVAをpH9.9,55℃,16時間加温)により調整したS-○VAについて、微小な板状結晶を得たので、SIEMENS社製X線回折装置により、X線回折実験を行ったところ、5Å程度の分解能の回折像が得られた。OVAについては1.95Å分解能で分子構造モデルが提出されており、今回得られた分解能は、これと比較するには十分でないと考えられた。 2) OVA精製方法の検討 高分解能の反射が得られない原因として、S-OVA標品の不均一性を考慮して、鶏卵からOVAを精製する段階と、OVAからS-OVAを調製する段階(次項参照)について改善を試みた。先ず、OVAの精製時に使用している高速液体クロマトグラフィー装置の変更を行った。OVAは分子内にS-S結合を1個と遊離のシステイン残基を4個併せ持つという特徴があり、これらの酸化や、相互変換がOVAの不均一性の原因となると考えられる。従来はOVAの精製時にステンレス製の流路を持ったクロマトグラフィー装置を用いていたため、システイン残基の酸化などを誘導する可能性があった。そこで、PEEK樹脂製流路の検出器を導入し、本タンパク質を金属に接触しない条件で精製することが可能となった。 3) S-OVA調製方法の検討 従来のS-OVAの調製法は、pH9.9,55℃,16時間加温という過激な条件であったため、脱アミド化やβ脱離などの化学反応が副次的に起こる可能性があった。そこで、より穏和な条件として反応温度を30℃に下げたところ、1週間の反応時間でS-OVAにおける熱安定化が起こることがわかった。前項の方法で精製したOVAについて、今回定めた反応条件でS-OVAを調製し、X線回折実験に供するための単結晶の調製を試み、板状の結晶を得た。
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