1997 Fiscal Year Annual Research Report
雨滴集中滴下点の観測に基づく樹冠遮断雨量推定手法の開発と小流域スケールへの適用
Project/Area Number |
09760139
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
蔵治 光一郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (90282566)
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Keywords | 樹冠遮断 / 林内雨 / 樹幹流 |
Research Abstract |
樹冠通過雨量の空間分布と集中滴下点の観測のための雨量計として、本研究の研究代表者が開発した、ある面積内の集中滴下点を全て観測できる雨量計を2個作成した。東京大学千葉演習林袋山沢小流域内に試験プロットを設け、20個の貯留雨量計を設置して樹冠通過雨量の連続観測を行うとともに、この2台の雨量計を設置して、樹冠通過雨量分布と集中滴下点の集中観測を、上層木、下層木それぞれについて行った。上層木については、下層木が生育していない、樹冠が比較的疎な場所を小領域内より選んで上述の雨量計を設置し、樹冠通過雨量、集中滴下点の分布形と樹幹、樹冠縁からの距離や降雨特性、気象条件との関係を調べた。下層木については、下層木の樹冠下に雨量計を設置して同様の観測を行ったのち、下層木を伐採する処理を行い、伐採後も観測を続けることで、下層木の影響を直接的に検出した。また、樹幹流下流の発生メカニズムを解明し、風速依存性の原因を明らかにするために、林内に風向風速計を設置して観測し、同時に、代表木の生枝下高の高さに樹幹流下水補促装置を取付け、樹幹流下水をホ-スで地上まで導水し、胸高部には4方位に区分された樹幹流下水補促装置を取り付けて樹幹流下量の観測を行った。その結果、15mm未満の降雨時には、生枝下樹幹流下量は周辺の木の樹幹流下量と比べて際立って多かった。これは樹幹を流下する過程で幹の水分不足解消に使われるはずの水がそのまま流出したためと考えられ、その量は、推定3〜10リットルであった。胸高樹幹流の全樹幹流に占める割合は降雨イベントによって異なるが、おおむね5%以下であった。生枝下樹幹流は風速の影響を大きく受けていた。このヒノキ荘齢林では大部分の水が樹幹でなく樹冠で集められており、強風を伴う雨が樹冠に吹きつけることによって、樹幹に集まる水量が増加するプロセスが、風が強いとき樹幹流下量が増加する現象が生じていることがわかった。
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