Research Abstract |
本研究の目的は,成長特性・材質特性の異なるスギ品種を対象に実験的研究をおこない,「品種の概念(遺伝性)」を踏まえたうえで,スギ丸太品質・材質への森林施業,とくにここでは間伐の影響を明らかにすることである. 研究対象林分は九州大学福岡演習林のみの予定であったが,事情により一部試験木の伐採が不可能となったため,大分県湯布院町にある民有林3林分を試験対象地として新たに追加した.それら林分を対象に,林分密度(相対幹距),樹高,胸高直径樹冠率の測定をおこなうとともに,個体位置図の作成をおこなった.これらの調査結果をもとに試験木を選定した後,伐倒し,各試験木の樹幹高さ0.2m,1.2m,2m,4m部位から,生材含水率測定用の円板(10cm厚),容積密度数などの木材基本性質測定用の円板(10cm厚),さらに2m〜4m部位から力学的性質測定用の丸太を採取した. 生材含水率測定用の円板は,伐倒後ただちに実験室に持ち帰り,心材,辺材に分割し,生材含水率を測定した.その結果,辺材に比べ心材の含水率が高い品種が存在すること,樹幹内の含水率分状況は品種内では大差なく,間伐等による林分密度の変化の影響よりも,品種特性の影響がきわめて大きいことが明らかになった. 木材基本性質測定用の円板については,年輪幅,未成熟材率,各年輪ごとの仮道管長の測定を現在おこなっている. 力学的性質測定用の丸太については,打撃法により丸太ヤング率の測定を現在おこなっているが,間伐の影響よりも,品種特性の影響が大きいようである. 以上のように,研究計画よりはやや遅れぎみであるものの,実験を中心とした研究により,データ蓄積は着々とすすんでおり,最終的な間伐の影響評価は,研究対象全林分・全試験木のデータが揃った段階でおこなう予定である.
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