1997 Fiscal Year Annual Research Report
培養系におけるマコンブ胞子体の成熟誘発に関する研究
Project/Area Number |
09760168
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水田 浩之 北海道大学, 水産学部, 助手 (00250499)
|
Keywords | マコンブ / 胞子体 / 成熟 / 子嚢斑 / 培養 / 栄養塩 |
Research Abstract |
胞子体の成熟を誘導する最適条件を明らかにするために種々の光、温度、栄養塩環境で胞子体片を培養し、成熟誘導を試みた。まず葉体片を3種の温度条件下で培養し、成熟の誘導状況を調べた。その結果、子嚢斑形成面積は15℃で最も高く、表面積のおよそ8割に達した。これに対し、5℃および10℃では子嚢斑形成が数週間遅れ、子嚢斑面積も表面積の4〜5割程度であった。3種の光強度で胞子体片の成熟を誘導させた場合、子嚢斑面積は強光下(116uE・m^<-2>・s^<-1>)で最も大きく、表面積のおよそ7割程度であった。33および66uE・m^<-2>・s^<-1>の光強度では表面積の約3〜4割程度に子嚢斑が形成されたにすぎなかった。また、胞子体片を短日、等日および長日条件下で培養したところ、短日条件でより早く子嚢斑形成が確認された。しかし、光周期の影響は温度が高くなるにつれ小さくなっており、15℃ではほぼ同調的に成熟した。さらに胞子体の成熟への栄養塩の影響を調べるため、栄養塩添加培地と無添加培地で成熟誘導を試みた。その結果、栄養塩の不足は子嚢斑形成を遅らせるばかりでなく、その面積を著しく減少させ、子嚢斑が形成されない場合もあった。以上の結果から、マコンブ胞子体の成熟誘導条件としては短日、高温(15℃)および富栄養条件が最適であることが明らかになり、この条件では用いた全ての胞子体片を成熟させることができた。現場実験では、ほぼ1年中成熟した胞子体が採取され、成熟葉に見られる子嚢斑の面積は季節や胞子体部位に関わり無く体内の窒素含有量に比例していた。この結果より生長を制限する主要因の1つである窒素態栄養塩が成熟においても制限要因となっており、天然環境における栄養塩環境がマコンブ個体群の繁殖力を大いに左右することが示唆された。 次年度はこの胞子体誘導のプロセスとそれに関わる代謝や物質を詳細に明らかにしていく予定である。
|