1997 Fiscal Year Annual Research Report
水圏に常在している環境細菌を利用した水圏環境の維持・管理そして改善・富栄養化対策としての環境細菌の積極的な利用
Project/Area Number |
09760178
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉永 郁夫 京都大学, 大学院・農学研究家, 助手 (40230776)
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Keywords | 低栄養細菌 / 16SrRNA / MPN / 海洋細菌 / 多様性 / 系統樹 / 培養法 |
Research Abstract |
本研究の目的は,人間活動に由来する湖,河川そしての沿岸海域などの水域への過剰な炭素,窒素およびリン(C,N,P)の負荷を,本来環境中に存在する細菌群集を積極的に利用して軽減することであり,そのために,本来環境中で優占しているものの従来の培養法では検出・分離できない低栄養細菌の動態を調べる。平成9年度は,標準的な海洋環境として設定した太平洋黒潮域の定点の表層水および中層水から,海水をそのままろ過滅菌して培地を調製し(iSW培地),これを用いてその場で優占していると思われる低栄養細菌を多数分離した。その際,iSW培地にC源として微量のグルコースを添加した培地(C培地)とC培地に微量の無機N源とP源を添加した培地(CPN培地)を作製し,低栄養細菌のMPN計数値を比較するとともに,分離菌株の種組成を16SrRNA遺伝子情報レベルで比較した。得られた結果は以下のとおり。 1)3種の低栄養細菌用培地を用いて,従来法(寒天平板法)では検出・分離できない低栄養細菌(偏性低栄養細菌)を,多数検出・分離できた。しかし,3種の低栄養培地による低栄養細菌MPN計数値のあいだに明瞭な差異は見られなかった。 2)複数の低栄養細菌分離株の染色体DNAから,それぞれの16SrDNAをPCR増幅し,その塩基配列情報から低栄養細菌分離株の系統学的位置を決定したところ,すべて既知の海洋細菌とは系統的に遠い,新奇な細菌であることが明らかになった。同じ海域から非常に希釈したペプトン培地を用いて分離した低栄養細菌(やはり通常の培地では検出・分離・培養できない)が,ほとんどproteobacteriaγ群に属したのに対し,今回用いた3種の培地による低栄養細菌分離株はproteobacteriaα群,β群,γ群およびFlexibacter群に多様に分散した。このことから,海洋中には通常法では培養できない多様な低栄養細菌が存在し,その栄養塩利用特性も異なることが示唆された。
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[Publications] I.Yoshinaga, et al.: "Analysis of algicidal ranges of the bacteria killing the marine dinoflagellate Gymnodinium mikimotoi,isolated from Tanabe Bay,Wakayama Pref.Japan" Fisheries Science. 63. 94-98 (1997)
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[Publications] MS.Shin et al.: "Phylogenetic analysis by 16S rRNA gene sequencing of obligate oligotroph isolated from the Northern Basin of Lake Biwa(mesotrophic lake)." Microbes and Environments. 12. 27-36 (1997)
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[Publications] 吉永郁夫: "赤潮の動態に関わる従属栄養細菌の分子生態学的研究" 日本水産学会誌. 63. 502-505 (1997)
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[Publications] Y.Ishida et al.: "Possibility of bacterial control of harmful algal blooms." Progress in Microbial Ecology(Proceedings of the 7th International Symposium on Microbial Ecology). 495-500 (1997)