1997 Fiscal Year Annual Research Report
有毒プランクトンのシスト(種)形成誘導メカニズムに関する分子生態学的研究
Project/Area Number |
09760179
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
足立 真佐雄 高知大学, 農学部, 講師 (70274363)
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Keywords | 有毒プランクトン / dinoflagellate / Alexandrium / 微生物生態学 / 麻痺性具毒 / PSP / 有性生殖 / シスト |
Research Abstract |
有毒藻Alexandrium属の形成するシストは、翌年春のブルーム発生の″種集団″として重要視されている。本藻のシスト形成は、窒素やリンの制限・枯渇時に誘起されるとの報告があるが、現場では窒素やリンが枯渇あるいは変動していないときにも活発にシストが形成される場合があり、現場でのシスト形成誘起条件は十分に明らかにされていない。そこで、本研究は現場における生物因子、特に細菌が本藻のシスト形成に与える影響について明らかにすることを目的にしている。まず、広島県呉湾St.11より定期的に採水した試水をろ過することにより無菌区と有菌区の海水を調製し、これらにf/2培地にて培養した対数増殖期のA.catenellaの+と-株を混合して加え、1ヶ月後倒立顕微鏡下でシストを計数した。その結果、試水の季節に関わりなく細菌区のシスト形成数は無菌区のそれと比較して高かった。そこで、1997年5月12日の有菌区と無菌区の試水を用いて接合実験を行なって、両者の「シスト形成率」を求めたところ、有菌区では5.05×10^<-2>,無菌区では2.25×10^<-2>cysts/cellであり、有菌区においてシスト形成が促進されていた。その際、無菌区と有菌区の培養上清中の無機窒素・リン濃度は培養期間を通じてほぼ同じであった。また、MPN法により求めたシスト形成″促進″菌数は、A.tamarenseの消長と正の相関を示した。よって、現場海水中には様々な本有毒藻のシスト形成促進細菌群や阻害細菌群が存在しており、これらが本藻のシスト形成に大きな影響を与えている可能性が示唆された。来年度は、有毒プランクトンのブルームダイナミックスとこれらのシスト形成促進あるいは阻害因子の動態との関係や、これらシスト形成促進あるいは阻害因子を分離同定しその実体を明らかにしたうえで、その作用機作についても詳細に検討してゆく予定である。
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Research Products
(1 results)